第600回「手抜き悪習まだ韓国に健在、原発隔壁にビル柱」

 アラブ首長国連邦(UAE)で韓国が建設中の原子炉格納建物に亀裂が見つかり、ソウル繁華街に立つ15階建てビルが崩壊の危機と伝えられました。コンクリートを打つ工事などで手抜きする悪習が韓国でまだ健在と知らしめました。原子炉格納建物は日本の原発なら原子炉格納容器と呼ばれ、放射能の外部漏洩を防ぐ最後の砦です。ソウル江南区の危険ビルは1991年竣工で地上15階、地下7階建て、昨年と今年、自治体による肉眼安全検査で安全と認定されたのに11月末に内装工事をしていると主柱のコンクリートが剥がれ鉄筋がむき出しになっていました。  韓国は独自開発した次世代型原子炉「APR1400」(上の写真:韓国電力公社ウェブから引用)をUAEから4基受注、2012年からバラカ原発として建設しています。そのうちの3号機で年末の竣工を前にして、内壁に注入している潤滑油グリスが外部に染み出しているのが見つかりました。壁は厚さ100〜120センチもあり、コンクリートを打ち終わって内部から金属の筋を埋設して強化します。張力を掛けての埋設を容易にするためにグリスを内壁に注入していたわけです。

 ハンギョレ新聞の16日付《韓国が建設したUAE原発に“亀裂”可能性…UAE側“調査中”》がこう伝えています。

 《グリスが外壁で発見されたということは、壁に亀裂があるかもしれないという話になる。今年8月、同じ問題が発見された全羅南道霊光(ヨングァン)のハンビッ4号機は、現在もグリスの漏洩部位を探しているほど、簡単でない問題だ》《建設中に生じた技術問題が工期の遅延および費用増加の憂慮を膨らませている。ヴィクトルソンUAE原子力規制庁長はインタビューで「私たちが運営許可を出す前に、彼ら(韓国)がこの問題を直さなければならない」と話した》

 このほか2号機でもグリス漏れではないものの「すき間」が外壁で確認されています。ハンビッなどあちこちの韓国原発で大小の「すき間」が見つかっていて、「約20年前の施工能力が不十分だった」と説明されてきました。しかし、最新原発でもグリス漏れがあったことで韓国の原発施工能力が疑われます。

 高速鉄道脱線など安全を脅かす事故が頻発している事態に、中央日報は《【社説】江南のど真ん中の15階建てビルを崩壊直前まで放置したとは=韓国》でこう書いています。

 《ソウルの代表的オフィスビルが密集した江南テヘラン路のテジョンビルは2階のインテリア工事の途中で亀裂を発見し、崩壊危険のために13日0時から出入りが禁止された。このビルの2階にある中央の原形柱は約20%が豆腐カスのようにつぶれた。誰か見ても不良施工が疑われるほどだ。当局の緊急安全診断で最下等級であるE等級(不良)と推定された。あやうく三豊(サムプン)百貨店崩壊事故のような大型惨事が起きるところだったというから肝を冷やす》

 300人を超える犠牲を出したセウォル号沈没事故があった2015年に第477回「安全になれぬ韓国、手抜き勝手の国民意識が原因」で、《韓国の場合は法やルールに従うかどうか誰もが勝手に判断している「5000万総人治」であり、安全になれる方が不思議と言えます》と指摘しました。危険ビルの場合は図面と違う施工をしているようですし自治体の安全確認も酷く、また、重要施設のコンクリートを打つなら愚直に隅々まで流し込む面倒な道から勝手に外れたのでしょう。