第619回「文大統領の光復節演説で知る韓国メディア愚見識」

 反日激化かと思われた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の光復節演説が大人しかっただけで、保守系の朝鮮日報が「日本が貿易報復撤回を」との社説です。これで日韓の葛藤が解けようはずもなく、信じられない愚かさです。もう一つの保守系、中央日報社説も「安倍政権が柔軟な姿勢で応え、ようやく生じた対話のモメンタムを生かすことを促す」です。政権に近い進歩系のハンギョレ社説は「光復節をむかえ、成熟して洗練された姿勢で日本に姿勢の転換を求めたもので、日本も文大統領の苦言を胸に刻むよう願いたい」でした。相手である日本が何を考えているのか全く無視して、韓国の内々で妄想している、いつに変わらぬ韓国ファンタジーと判断するしかありません。河野外相の対応は辛口で「大統領は国際法違反状況の是正にリーダーシップを」でした。

 朝鮮日報16日付の社説が《対日が理性的だったのは幸いながら、現実認識が相変わらず逆転》(韓国語)です。

 《大統領が15日の光復節74周年記念の辞で「今でも日本が対話と協力の道に出たら喜んで手を握るだろう」とした。民主党の一部が「ボイコット」を主張する来年東京オリンピックは「東アジアが友好と協力の基礎をしっかり固める絶好の機会」とした。過去より未来を主に言及した。日本の安倍首相がこれに応えて、一日も早く百害無益な韓日葛藤を終え、通常の関係に戻らなければならない。そのために、日本の韓国に対する貿易報復から撤回されなければならない》

 政権に批判的な最大手メディアの社説認識がこの程度では韓国社会が変わるはずがありません。それでも、この社説に付いた保守系韓国読者の賛同が最も多いコメントは《反日と親日を愛国と売国に分け、不買運動を煽って、来年の総選挙を行う計画を放棄したのか?(中略)光復節祝辞は総選挙対策以上でも以下でもない》と辛辣です。

 やはり16日付中央日報日本語版の社説《節制した光復節対日メッセージ…安倍政権が応える番だ》はこう手前みその評価でした。

 《文大統領は日本の経済報復を意識したかのように「誰も揺るがすことのできない国」をつくるという意志を強調したが、刺激的な批判を避けるなど節制した対日メッセージを送った。強制徴用賠償判決と日本の経済報復で悪化の一途をたどる韓日葛藤を外交的に解決していこうというメッセージを込めたと分析される》

 ハンギョレ日本語版の社説は《「自強」と「克日」の道を示した文大統領の記念演説》です。

 この社説韓国語版に賛同少数ながら《論説委員の皆さん、こんな御用社説を書いて恥ずかしくないですか?北朝鮮は、大統領の祝辞を存分に嘲笑し、私たち国民を侮辱しました。大統領の現実とはかけ離れた認識を正す責任があなたにあると考えませんか?その誤りを擁護し、奨励しているので、あなたは奸臣です》と手厳しい批判がありました。

 今回の対韓輸出規制騒ぎが起きる直前、大阪G20を前にして6月に書いた第610回「反日迎合姿勢の韓国メディアに韓国読者が異議」で「メディアは最初は暴走を止めるどころか煽っていたと、数年来ウオッチしてきた者として敢えて主張させていただきます」と指摘しました。7月半ばの第616回「次の韓国制裁土壇場で保守白旗直言、政権は苦悩」で書いた一部の動きがどうして手遅れだったか、今回の光復節演説をめぐるメディアの愚かしさで納得がいきます。保守系も進歩系もメディアが大統領にゴマをするのが大勢です。