第621回「韓国疑惑の新法相、対日政策の捻じ曲げも主導」

 娘の進学不正疑惑など暴露され社会正義実践者の仮面が剥げたチョ・グク氏が韓国の新法相に任命。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の最側近でいわゆる徴用工を巡る対日政策を捻じ曲げており、一蓮托生しかない判断でしょう。チョ氏はソウル大法学部教授であり、前の大統領府民情首席秘書官、54歳です。社会正義の原理原則を強調して若い世代から熱い支持を受け、ムン政権が過去の保守派政権とは一線を画す正義実現政権とみなされたのも氏の存在が大きいと言われます。一連の疑惑は捜査進行中ながら、自分の家族だけ内緒で優遇した点は明白です。日本から見るとそれは韓国の国内問題であり、本質的な対日政策とのかかわりを明らかにしてみます。

 いわゆる徴用工問題は日本からすれば1965年の日韓請求権協定で解決済みであり、第610回「反日迎合姿勢の韓国メディアに韓国読者が異議」で指摘したように韓国でも過去からの事情を知る人は《すべて終わったことを、私たちの一方的な論理で裏返してしまった》と認識しています。ではムン政権の認識はどうなのか、判然とした公式見解が出ていません。

 毎日新聞、8日配信の《徴用工問題 韓国政府が05年に下した意外な判断》も同じ疑問を持って調べています。

 《日本企業に賠償を命じた昨年10月の最高裁判決は、この決定に矛盾しないのだろうか。韓国外務省が最近、矛盾するという認識は「誤解」だと説明した。当時、ソウル特派員として追加支援を発表する記者会見に出ていた私も、この点は引っかかっていた。14年前の外交判断と最高裁判決の間にある「溝」の背景を検証してみた》

 《05年の政府見解と追加支援について今、文大統領がどう思っているのか。追加支援の被害認定作業を担った韓国人研究者の友人らと何度も議論したが、結論はいつも「よく分からない」だった》

 今回の日韓葛藤の最中、チョ氏は民情首席秘書官の役職にありながら連日、30万フォロワーを持つFacebookで大量の反日発信を続けました。それを整理してギムチャンジュン弁護士が朝鮮日報に《チョ氏がFacebookで明かさない事実》(韓国語)を寄稿しています。8月27日付です。

 《チョ氏は先月、Facebookに掲載した記事で、2005年に盧武鉉政府時代、首相室の諮問機関である官民共同委員会の白書を引用し、強制的に徴用は反人道的重大犯罪で、最初から請求権協定の交渉対象ではないと記録と明らかにした。しかし、白書では韓日政府間強制徴用補償が請求権協定で妥結したと記録されている。チョ氏が間違って白書を引用したものである》

 《白書原文には「国家権力が介入した反人道的不法行為(従軍慰安婦、生体実験、強制動員の犯罪行為)は」となっている。これをチョ氏は、「国家権力が介入した反人道的不法行為(従軍慰安婦、生体実験、強制動員など重大犯罪)は」と引用した。両者は意味が大きく異なる。チョ氏引用通りなら強制動員自体が重大犯罪という意味になるが、実際の白書原文は強制動員の過程で暴力行為などの犯罪行為がある場合だけを名指しし、不法行為とした。強制徴用自体は不法行為ではないだろう。このように原文を改変したのは、強制徴用を請求権協定から排除する意図と思われる》

 チョ氏主張と文献に照らしての正誤分析はさらに続き《チョ氏の過失は常識の枠を超えている》と断罪されています。文献を厳密に扱わねばならない研究者、ソウル大法学部教授としてあるまじき失態ですが、ムン政権内部では、この捻じ曲げ論理がまかり通っていると見るべきでしょう。

 これではムン政権とまともな話し合いは出来そうにありません。