第629回「新型肺炎の中国発生が1週間で半減、頂点が近い」

 新型コロナウイルス肺炎の中国本土での新規患者発生が1週間で半減しました。増える勢いにブレーキが掛かっており3月前半にも新規発生が止む可能性ありです。湖北省の重症例は急増中で死亡者急増の恐れありです。中国保健当局の発表を全土と湖北省でまとめると、日ごとの患者発生がピークだった4日には3887例をも数えましたが、11日には2015例でした。湖北省以外の省や市の新規発生でピークの3日890例が半分に下がったのは9日444例でした。しかし、湖北省の重症例だけは1週間で3倍増5724例にもなっており、医療施設不足で顕在化しなかった隠れ重症が病床急増などで表に出たと考えられます。以下に1月25日以降の動きをグラフ化しました。(【2/15追補】第630回「中国の新型肺炎、統計激増でも減少傾向は不変」  流行の中心、武漢市の封鎖や団体客の海外旅行禁止が言われた1月25日の新規患者は湖北省323例、湖北以外365例でした。26日でも湖北省371例、湖北以外398例だったのに翌日27日から激変が起きました。湖北省1291例なのに湖北以外は480例と、ここから湖北省だけが毎日、湖北以外とは何倍も多い新規患者発生になっていきました。ピーク2月4日では湖北省3156例、湖北以外731例でした。中国側は否定しますが、第626回「感染広めた4万人宴、北京など新型集団発症に」で取り上げた要因も考えられるでしょう。

 日ごと新規患者が減る全体の傾向が持続し1週間ごとに半減すれば、3月前半にも数十人規模まで落ちえます。ロイター11日付《新型肺炎流行、4月に終息も ピークは2月か 中国専門家トップが予想》が次のように報じています。

 《中国政府の専門家チームを率いる鐘南山氏が「今月の半ばか下旬に恐らくピークを迎える可能性がある。その後はやや横ばいのような状態になり、それから収まるだろう」とし、「4月ごろに終息すると望んでる」と述べた。その上で、新型ウイルスに「なぜこれほどの伝染性があるのかは分かっておらず、大きな問題だ」と慎重な見方を示した》

 流行発生時点で武漢市の治療体制は貧弱でした。7日の記者会見で二つの急造された新設病院が2600床、さらに軽症患者用に5400床を用意していると発表しています。しかし、6日時点で医療用防護服は59900点必要なのに41400点足りず、医療用N95マスクは119000点の需要に56800点足りない、医療用ゴーグルは22500点の需要に19200点足りないと明かしています。恐るべき医療施設と医療用品の不足です。医療関係者の悪戦苦闘ぶりが察せられます。WHOによる現地調査を中国政府がなかなか受け入れない理由が透けて見えます。

 ナショナルジオグラフィック10日付《新型肺炎、封鎖された武漢で一体何が起きているのか》が1月25日に発熱した湖北大学講師がなかなか病院に到達できず、周囲の尽力で収容されたものの新型ウイルスの検査はキット不足で見送られて自宅で自主隔離になっている状況を伝えています。これまでもアンダーグラウンドの情報として病院で診てもらえない患者が多く、そのまま亡くなっているケースが多いとされてきました。病床数を増やした結果、湖北省の在院患者数は1日の8565例が11日には26121例と3倍に増えました。重症患者数はこの間に1118例が5724例と5倍増です。死亡者は1日45例が10日には103例、11日には94例と倍増しており、表ざたになった重症患者急増から生まれる死亡者急増は免れないでしょう。