第632回「新型肺炎ピークは3カ月後、入院4万の困難事態」

 新型コロナウイルス肺炎のピークは市中感染が始まって3カ月後を想定と厚生労働省が自治体に連絡しました。42万人の外来患者、4万人の入院に備えよと困難な指針であり、ここ1、2週間の辛抱呼びかけなど霧散です。本音が語られるのはそれなりに結構であるものの、安倍首相以下のその場しのぎ発言はもう止めなくてはなりません。国民に正面から対ウイルス長期戦を説明して、イベントなどの中止・縮小が長引く点や生活自粛による経済活動への影響が深刻になる今後の見通しを示すべきです。6日付の《新型コロナウイルスの患者数が大幅に増えたときに備えた医療提供体制等の検討について(依頼)》に記載された想定を、2018年人口に当てはめたピーク時の外来・入院・重症者数一覧表として以下に作成しました。  新型コロナウイルス感染症対策推進本部が都道府県など自治体衛生主管部局に出した事務連絡です。「ピーク時は、各都道府県等において疫学的関連性が把握できない程度に感染が拡大した時点から概ね3か月後に到来すると推計」としており、北海道や愛知などはこの拡大時期に該当し始めています。65歳以上、15-64歳、14歳以下の3年齢区分で危険度を勘案し、医療需要の目安を出しています。《(ピーク時において 1日あたり新型コロナウイルス感染症で入院治療が必要な患者数)=(0-14歳人口)×0.05/100+(15-64歳人口)×0.02/100+(65歳以上人口)×0.56/100》とあるうちで、65歳以上の係数「0.56」だけは入院が外来の係数「0.51」を上回っており明らかに誤記載です。重症者数が係数「0.018」であることを考慮すると「0.056」が正しいと考えて表を作成しました。

 高齢者ほど感染しやすく外来で65歳以上18万人と、現役世代の21万人に迫り、入院では2万人近くとトップ、重症者は6402人と85%を占めます。若年者まで合計すると外来が42万7千人、入院が4万2千人、重症者が7464人に上りました。 1日あたり入院が4万とは、中国の累計患者数8万の半分がピークに集中すると想定していることになります。非常に大きな数であり、室内空気圧を落としウイルスを外に出さないために必要な陰圧病床が全国で3千か4千しかないと言われているので、手当を急がないと現場が苦労するのが見えています。

 世界的にみると7千例を上回る患者を出している韓国は第631回「韓国新型肺炎患者数の伸び、中国湖北省に近い」で指摘した勢いは、新興宗教団体関連の信者PCR検査が減って落ち着き始めていますが、防疫関係者はソウル・釜山など他地域でのクラスター感染増加に警戒を強めています。死亡者の急増があり患者数でも韓国を追い越すとみられるイタリアは緊急事態として北部1600万人の住民の足止めに入りました。先週まで懸命に挑んだ封じ込め対策が機能しなかったと判断したようです。4月3日まで中国以外では最も急進的な措置が続きます。米国は9日時点で日本の患者数を上回り、以前から広く市中感染は必至とみていた疾病対策センター(CDC)は数日中に現状を見直すようです。新たなクルーズ船「グランドプリンセス」での感染の広がりも注目です。また。イランも患者7千例を突破、仏独両国が千例を超え、スペインが千例に迫っています。

 ウイルス震源地・中国では新規患者発生が1日に百人を下回るようになっています。第629回「新型肺炎の中国発生が1週間で半減、頂点が近い」で指摘の通りになっています。しかし、時事通信は《中国政府は7日の記者会見で、春節(旧正月)連休で農村などに帰省した出稼ぎ労働者のうち、都市部の仕事先に復帰したのは60%の7800万人にとどまると明らかにした》と報じ、この他に休校措置が取られている学生1億人も都市に戻れていません。残り4割の出稼ぎ労働者と学生を除いたままでは社会生活が正常化したとは言えません。北京などの大気汚染レベルも下がったままであり、経済活動を元に戻して新型肺炎を封じ込められるのかが問われています。