第636回「対コロナ社会防衛意識、大阪が東京より強烈」

 新型コロナ緊急事態宣言の見直しが今週実施の見込みであり、病床事情がなお切迫の東京はともかく、大阪は実質的な緩和に踏み切れそうです。経緯を振り返ると商人気質の大阪人が東京人よりも強烈に社会を守りました。現在、大阪で暮らしていてカネさえ儲けたらよいのではなく、「世の中早く元に戻して、みんなして儲けましょう」というのが大阪庶民の意識のように感じます。3/20から5/12までの日ごと新規感染者発生数を、東京と大阪と、それぞれ感染経路不明分を合わせ4つのグラフにして並べました。人口は東京が大阪の6割増しであると留意してください。  4/7に出された新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の前から4/10にかけて新規感染者発生は東京と大阪ともかなり急で、このままでは手が付けられなくなりそうな感じもありました。院内感染などのクラスターを除いた感染経路不明グラフが市中感染の状況、庶民のありのままの行動ぶりを示していて、東京も大阪も急カーブで立ち上がっていました。1週間サイクルの新規患者発生数の癖を消す7日移動平均が赤い折れ線グラフで添えてあり、これに注目してください。

 4/20付の第633回「緊急事態宣言1週間で新型コロナは頂点、減少へ」で指摘したように宣言2週間後から効果が期待できると言われたのに、1週間でピークを打って減少に転じました。国内でも感染爆発中の国が多い海外でも驚きをもって迎えられました。しかし、東京では4/23ごろまで高原状の頂を形成してなかなか落ちてきませんでした。一方、大阪は感染経路不明分で宣言10日目の4/17あたりから急速に下降し始めました。宣言2週間後になるとピークの半分、3週間後は4分の1、大型連休明けには8分の1まで落としました。クラスター発生があって大阪全体の減少ぶりはもう少し鈍いのですが、現状は5/11「1」、5/12「6」に落ち着きました。

 東京も宣言2週間後から急速に減少を始めました。ところが、3週間後の5月初めに反転増加を見せてしまいました。4日付第635回「新型コロナ感染反転増加、東京は窮地に陥る?」で心配しました。この足踏み状態は幸いなことに1週間で解消されて、現状は3月下旬並み、10日に「30」以下のレベルまで来ました。東京と大阪の人口比1.6を考えると、5/11「15」、5/12「28」はまだまだ東京の方が発生が多すぎると知れます。  最後に全国の感染者数と7日移動平均のグラフを掲げます。ようやく3月下旬に戻せたと確認できます。米国のニューヨーク州知事は都市封鎖の緩和基準に3日移動平均を多用しています。私も3日移動平均を最初に試したのですが、日本の場合は有用なグラフになりませんでした。私が始めた7日移動平均グラフは違和感を持って見る方があったものの、使っていらっしゃる方も増えています。

 なお、日本の防疫はPCR検査が少なすぎて駄目との議論がネット上で盛んですが、賛同しかねます。フェースブックで出したコメントがあるので収録しておきます。

 本来は検査をどんどん拡充すべきですが、日本は全く準備していなかったので不可能です。検査ではガウンやマスクを1回で使い捨てにしなければ感染拡大になりますが、肝心の医療現場でガウンもマスクも足りていないのに出来ようはずがありません。全くの準備不足で検査を拡大したイタリアが「感染させた」と後悔しています。残念ながら現体制で無理せずに、政府は当てにできないものの国民の自他を思いやるマナーと強いBCG接種でできた体質に依拠して感染爆発を避け続けるしかありません。