第643回「新型コロナ流行型は尻尾つかませぬ厄介型」

 新型コロナ流行が新たな急増段階に入り、第二波での感染経路不明者が潰せないまま流行に火が付きました。主役は3月以降のクラスター潰しで捕まえきれなかった2系統のウイルスで、第一波と違い保健所が潜んでいるクラスターを見つけ切れません。これまでの自粛が効かない無症状若者群などに潜む可能性があり、しかも、西日本では東日本と流行様相が違って死者急増になっています。しかし、政府の能天気ぶりは春の感染初期と変わらず、市民側の自覚・自衛が今後を左右するでしょう。  東京都のウェブから抜き出した第一波収束と、今回の流行拡大を示すグラフです。「接触歴等不明者」とあるのが感染経路不明者です。第一波ではピークになった後、感染経路不明が経路判明に置き換わりました。流行しているクラスターを見つけ潰しました。第二波では感染経路不明者数が10月でも高止まりしており、「クラスターの本丸」が見つけられなかったようです。この経過は大阪も同様です。原因は以下の事情によります。

 朝日新聞の12日付《コロナ第2波、2系統のウイルスから再拡大 感染研分析》がこう伝えています。

 《11月までに感染者の検体から得られたウイルスのゲノム(全遺伝情報)を分析した。それによると、欧州などから流入したウイルスは一時、全国へ広がったが、保健所による疫学調査などさまざまな対策で、新規感染者が少なくなった6月ごろまでに、ほとんどの感染の連鎖は絶たれた。しかし2系統のウイルスは封じ込められず、その後の感染の再拡大が起きたと推測されるという》

《黒田誠・感染研病原体ゲノム解析研究センター長によると、3月以降の感染拡大では、100以上の系統数に広がったとみられるという。この2系統は、検査などが難しい集団で感染が続いていたとみられ、「再拡大の芽を摘むために、各自治体で対策を考える必要がある」と話した》

 現在、欧州で大流行を起こしているウイルスは6月にスペインで発生した変異種と見られているのに対し、日本国内はこれとは違う3月にやって来た欧州系統の変異種です。第一波の経験では封じ込めやすいと思われていましたが、生き延びている間に尻尾をつかませぬ厄介タイプに変わってきました。  もう一つ気になる傾向が日本の東西で第二波以降、死者の発生状況が変わってしまった点です。8月10日時点の死者累計と11月13日までの死者累計を比べました。この間の死者増加は北海道19%増、東京40%増と東で控え目なのに愛知、大阪と福岡は2.7倍前後であり、沖縄にいたっては6.6倍です。沖縄は人口百万人当たりの死者数で全国トップに躍り出ました。  実際の死者発生状況を東京と大阪で比べました。第一波は東京、第二波は大阪が多数の死者を出し、流行の様相が違うと伺わせます。生き延びているウイルスが2系統ある点に対応しているかも知れません。

 8月の第640回「新型コロナへの社会防衛、第二波も半月で起動」では国民による自粛効果ありと指摘したのですが、実際は第一波よりも厄介な相手でした。東京のように1週間で感染者が1.5倍ペースなら、2週間では2.25倍増であり、続いていけば爆発的な感染になります。政府は「GO TOトラベルなどは続ける」と相変わらず能天気ですから、市民側がこれまでに無い感染の仕方があり得ると慎重に考えて行動しなければならないでしょう。