第647回「中国国勢調査がまたも捏造、若年層大水増し」

【5/13追補】【5/19追補】
 1カ月も集計結果公表を遅らせた中国国勢調査2020、やはり数字の捏造に時間を掛けていたようです。目玉になる数字は「0-14歳」の若年層が17.95%を占め、10年前と比べて1.35ポイントパーセント増えた点でしょう。人民日報は《子供たちの割合は回復し、出産政策の調整は前向きな結果を達成しました》と胸を張ります、しかし、若年層の増加は過去の中国統計年鑑の数字から水増しされており、次に掲げるグラフで明らかにするように10歳未満人口が1500万人ほど架空計上されていないとつじつまが合いません。人口減少や社会の高齢化を隠します。  グラフでは国勢調査2010での5歳階級人口を10年経過したので10歳上げて描きました。11日の公表では「0-14歳」人口は2億5338万人でした。2010年調査の「0-4歳」は7553万人でこの分は死亡ゼロとして「10-14歳」に繰り上げれば、「0-4歳」と「5-9歳」で1億7784万人存在しなければなりません。両世代は中国統計年鑑の出生率推移から見てほぼ同じくらいなので8900万人ずつとしましょう。ところが、統計年鑑で知る出生数そのものは8150万人ずつしかないのです。差し引き、両世代あわせて1500万人が水増しされていると断じざるを得ません。

 ロイターは4月末に《中国の人口が50年ぶりに減少=FT紙》で 《フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は27日、状況に詳しい複数の関係者の話として、中国の人口が50年ぶりに減少したと報じた》と伝えましたが、これだけ水増しできれば人口減少の現実を覆すのは簡単です。1カ月もぐずぐずしたのは数字捏造について政府内での調整に手間取ったからでしょう。《FTは関係者の話として、人口統計は非常にセンシティブな問題で、政府各部門の総意がなければ発表されないと報じている》とのことです。

 中国の国勢調査は信頼できないと昨年の第641回「中国が男女比異常をごまかす国勢調査書き換え」で指摘しました。2000年調査と2010年調査で同一になるべき同じ年に生まれた男女人口を露骨にいじっていました。生まれた時はあんなに男子過多だったのに、不思議なことに適齢期になると男女比はほぼ「1」近くに偽造しています。この偽造過程で若年人口に千万人単位で水増しがあったと見られます。

 今回の捏造はありもしない若年人口を架空計上するもので、社会の高齢化を統計上でゴマ化す効果を生みます。第602回「中国の労働人口、今後は1億、2億と減る衝撃」で示したように、中国の現役の生産年齢人口は減り始めており、勢いは加速する一方です。米中の競合関係が言われる中、対米国の競争力もどんどん落ちます。米国のように大量の移民が入ってくる可能性もゼロです。

 第642回「中国が2035年に先進国並み、あり得ない根拠」で《中国1人当たりGDPが2019年に1万ドル(約100万円)を超え、5中全会コミュニケには数値目標は無いものの2035年にはその2倍以上を目指していると受け止められますが、実現はあり得ません》と指摘したのも、急速高齢化で現役世代が年金世代を背負いきれないほど苦しむ見通しからです。現実に起きる深刻な問題を架空の人口統計で緩和できる訳がありません。

 ★国勢調査参照ウェブ・・・中国国家統計局


 【5/13追補】捏造疑惑について責任者の国家統計局副局長による《インタビュー》(中国語)が早くも掲載されました。全数調査である国勢調査が圧倒的に優位なはずなのに出生率調査が間違いと言い切れない、グーグル翻訳で苦しい釈明を一部収録します。

 《一部のネチズンは、「0-14歳」の数を、以前に発表された14歳までに生まれた総数と比較し、これら2つの数字に偏りがあることを発見しました》《2019年のデータは1000分の1のサンプリングであり、1,000人が調査対象として選ばれています。この代表性は理論的には問題ありませんが、実際の作業にはまだ偏差があります》《2つの国勢調査のデータを通じて、過去10年間にサンプリングされたデータも修正します。これも国際的な慣行であり、国連が推奨する慣行です。他の国勢調査もこの慣行に従います。これが統計の基本要件です。このような改訂は、以前のデータが間違っているに違いないとは言えません》

 日経新聞の13日付《中国国勢調査、正確性に疑念 14歳以下の人口、出生数超す 国家統計局「調整していない」》はこう述べます。《人口問題が専門の米ウィスコンシン大学の易富賢氏は14歳以下の人口などを根拠に「最も質が悪い国勢調査」と批判した。調査対象は中国大陸に住む中国人だ。香港やマカオの出身者は含まない。約1400万人の外国人が中国に帰化したなら説明はつくが、中国共産党関係者すら「あり得ない」と首をかしげる》


 【5/19追補】大紀元18日付《中国、人口調査データに改ざん疑惑 「12億6千万人」との計算も 専門家「史上最悪」と批判》が中国国勢調査の疑惑について色々な専門家の厳しい分析と指摘を掲載しています。私も詳細な年齢別人口データが公表されたら過去の国勢調査と比較をしてみるつもりです。今回の若年層水増し問題に関しては最後に《一方、中国国家統計局は17日、「抽出調査は誤差があった」という理由で、抽出調査だった2011〜19年のデータを修正すると発表した。出生数は年平均で100万人ほど増えることを明らかにした》と記されています。

 過去にさかのぼって人口統計データを修正する方針です。それなら、第641回「中国が男女比異常をごまかす国勢調査書き換え」で指摘したように2000年国勢調査のデータも修正しなければ片手落ちです。その調子で恣意的な修正を施していけば、あちこちでつじつまが合わない局面がますます増えるでしょう。