第649回「コロナワクチン効果が県単位で観察できた」

【6/15追補】
 新型コロナワクチンの接種本格化が第4波の収束と重なっているために効果があるのか見えにくい状況ながら、陽性者の年齢構成を公開している兵庫県で調べたところ5月半ばに比べ6月中旬に入った現状で8%程度の減少効果が観察されました。兵庫県は人口553万人と多く県域も広いため接種が遅れ気味であり、12日現在で65歳以上の1回目接種率が23.37%と近畿地方最低です。40%を超える県も出始めていますから陽性者の減少効果は多くの県で兵庫以上でしょう。  5月16日からの1週間と、6月6日からの1週間で年齢層別に陽性者がどれほど減ったか比べました。5月の陽性者が1473例、6月の陽性者は345例でした。「80-90代」が最も大きく減り12.7%、次いで「60-70代」が19.8%でした。一番感染が多い「40-50代」の22.3%は平均値23.4%に近い数字です。コロナワクチンの接種は年齢が上の層を優先しているため「80-90代」の接種は相当に進んでいると考えられます。「80-90代」と「60-70代」の陽性者が平均値並みの減少しかしなかったと仮定して計算すると、6月の陽性者は376例と推定され8.3%の減少効果があったと見られます。

 先日の第648回「見えたワクチン予防効果、2割接種でも好転」ではワクチン接種で先行している諸国が接種を1回でも受けた全人口比「ワクチン部分接種率」で2割あたりから感染が減り、3割になると効果が明瞭になると指摘しました。日本の場合、12日現在で13.53%の1回目接種率でしかなく、2割に達するのは6月末でしょう。それでも隠れた減少効果が既に存在しており、酷い流行から6月に入り感染者減少に転じた沖縄で役立った可能性があります。参考に沖縄の感染者推移グラフを掲げます。6月6日から目覚ましく下がっており、高齢者接種率が2割に到達した時期です。  【6/15追補】「8.3%の減少効果」の意味を考えましょう。兵庫県の65歳以上高齢化率が2020年の推計で29.5%であり、これに「65歳以上の1回目接種率23.37%」を掛け算すると「6.9%」となり、ほぼ見合った値です。ワクチン接種初期段階でも接種した割合で陽性者は減っていくと考えたら良いでしょう。国内で使われている「ファイザー」「モデルナ」のワクチンは1回目でも効果が高いようです。中国ワクチンに頼る南米や中東の国は接種しても陽性者が減らず苦戦しています。

 目指しているのは集団免疫であり、厚生労働省のウェブに《ある病原体に対して、人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても、他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなり、間接的に免疫を持たない人も感染から守られます。この状態を集団免疫と言い、社会全体が感染症から守られることになります》とあります。これは接種率60%くらいとも言われます。過疎地や島しょ部の小さなコミュニティで先行して達成してしまう試みが始まっています。