第650回「ワクチン接種予防効果、世界は三分裂模様」

 ワクチン接種後発国の日本で1回接種の割合が20%を超えました。第648回「見えたワクチン予防効果、2割接種でも好転」で紹介した、この先に予防効果が期待される段階ながら世界を見渡すと、ほぼ順調な欧米に対して6割を超える接種をしながら予防効果が見えない国があります。日本のように20%前後に進んできた人口が大きい後発諸国も新型コロナ抑制方向に足並みがそろっていません。札幌医大フロンティア医学研のゲノム医科学部門サイトでワクチン接種と新規感染者数の推移グラフを作成し、三分裂模様の世界をそれぞれまとめてみました。グラフ全部に「世界」「日本」を入れてあるので比較の基準にしてください。

 ◆欧米はコロナを抑え込みつつある  G7主要国が50%ラインに到達し、人口100万人あたり過去1週間の新規感染者数が300人以下まで下りてきました。少し前まで数千人という恐ろしい状態でした。ドイツやイタリア、それにハンガリー、ポーランド、チェコは100人以下、現在の日本並みかそれ以下まで来ました。50人を割れば非常に安定した状態になります。人口と国土が大きい米国はまだら模様ですが、ニューヨークとカリフォルニアは接種率70%にもなり大幅な規制緩和が可能になっています。

 大きな感染力があるインド変異株に急速に置き換わった英国が、ワクチン接種をしていない若い世代や子どもへのまん延で大きなリバウンドを見せています。英国は規制緩和を先延ばししてワクチン接種に注力しています。集団免疫を達成と言われたイスラエルもインド変異株でリバウンドの兆候があります。ワクチンを受けた人に重症や死者が少なく、重症化予防が認められています。

 ◆中国ワクチン依存国は収束見えず  欧米のワクチン入手が難しくて中国ワクチンに頼っている南米チリや中東のバーレーン、それにモンゴルが接種率60%になっても抑制効果がはかばかしくありません。人口100万人あたり週間新規感染者数が2000人前後というのは大変な流行です。2回目あるいは3回目を接種した「完全接種率」でも5割を超えているのですから、中国ワクチンの効能に特大の疑問符が付きます。中国ワクチンを認めたWHOの責任問題にもなります。アラブ首長国連邦も3カ国に準じますし、部分接種3割を超えた南米の大国ブラジル、アルゼンチンが上記国と全く同じ推移をたどっているのが不気味です。

 ◆大人口の後発諸国が方向定まらず  後発諸国で接種3割超えのトルコは中国ワクチン依存度が高く人口100万人あたり週間新規感染者数が400人台で、改善の兆しがあまり見えません。巨大人口のインドは国全体が変異株流行ではなく、接種2割に届く段階で感染者数200人台に減り、規制緩和措置が言われています。米国が支援しているメキシコは100人台を上下しています。自国産ワクチンを持つロシアが800人台に急増中です。政府不信がワクチン不信にもつながって接種率が伸びません。

 接種率20%にのせた日本はどうなるでしょうか。これまでの新規感染者数減少は緊急事態宣言の規制によるもので、東京と大阪では既に底打ちして上昇の気配です。しかし、人口の3割もいる65歳以上への1回目接種が5割を超えた効果がこれから出るでしょう。職域や大学での接種が申請では1800万人分もあり、1カ月後のオリンピック開幕までに30%は確実、ひょっとすると40%に届く可能性もあります。欧米の推移グラフを見れば30から40%でどの国も大きな改善を見せています。変異株対策としてもワクチン接種に頼るしかありません。

 参考までに「ワクチン完全接種率」のグラフも掲げます。