第652回「変異株の猛威、ワクチン先行国も反転上昇」

 新型コロナワクチン部分接種率を職域接種を含めると国民の約35%まで押し上げた日本、東京五輪を直前にしてワクチンの予防効果を期待したいところですが、中国ワクチンより予防効果が高い欧米ワクチン接種先行国でもインド変異株(デルタ株)の猛威で感染者数は反転上昇しています。札幌医大フロンティア医学研サイトでワクチン接種と新規感染者数の推移グラフを作成すると、部分接種率が50%に達しても猛威は免れないようです。一方、ワクチン接種が進んでいると死者や重症者が大幅に減っているので、それを頼りに感染激増の英国が規制大緩和に踏み切ろうとしています。インフルエンザ並みに扱いたいのです。  部分接種率50%台に米独仏伊の主要国が並びますが、いずれもこれまでの感染者減少からU字を描いて上昇しています。東欧のポーランドとハンガリーは人口100万人あたりの1週間感染者数が50人以下の安全圏に到達しているので免れています。同じ東欧でもチェコはドイツ・イタリアのようなU字カーブです。また、接種率7割のカナダも大丈夫です。世界で最初に集団免疫達成を宣言して、通常生活に戻したイスラエルは凄まじいX字上昇です。感染激増のスペインも「緩和しすぎた」と言っています。

 旧植民地インドとの大量の往来でデルタ株にすっかり置き換わった英国は人口100万人あたり1週間感染者数が4000人に迫り、ワクチン接種では追いつかなくなっています。英国のアストラゼネカワクチンはファイザーやモデルナに比べてデルタ株への予防効果が落ち、しかも副作用の心配から子供には打てません。英国の大緩和は「子供をモルモットにするもの」との批判が出ています。しかし、次の国立社会保障・人口問題研究所の「感染者・死亡者数の国際比較」グラフで分かるように、1日の死者が1000人にも達していた悲惨な状態からワクチンのおかげで10人前後に落ち着いています。  デルタ株の猛威で人口100万人あたり1週間感染者数はイタリアが200人足らず、フランスやアメリカは500人を超えました。グラフを見ると過去の流行期のように死者数が増えません。英国に次ぐほど感染激増のスペインでも死者は一桁です。  同じグラフを現在、大流行で邦人の緊急帰国が相次いでいるインドネシアと、インドについて掲げます。部分接種率がインドネシアは10%台半ばながら中国ワクチンが主体で効果は薄くて死者急増、8月からファイザーワクチンを大量購入すると発表しました。インドは1日に1500万回接種と、日本の10倍の大量接種を巨大な国土全体で進めています。部分接種率が20%台半ばに進み、かつての大流行から日本で言う「ステージ3」にまで戻しています。インド変異株と言っても大きな国なので全土で流行しているわけではありません。

 6月の第650回「ワクチン接種予防効果、世界は三分裂模様」で中国ワクチンが主体の国では接種率がいくら上がっても流行収束の兆しが無いと指摘しました。その一つ、中東のバーレーンはファイザーワクチンの追加接種に踏み切りました。人口100万人あたり1週間感染者数が10000人を超える極端な状況から400人程度まで落とせました。