第657回「コロナ流行の深い沈静化、BCG日本株が作用」

 8月に1日5000例以上の新型コロナ陽性を出した東京が最近は20例まで流行を沈静化させました。日本同様に欧米産ワクチン接種で抑え込みかけていた諸国がリバウンドに苦しむ中で日本の深い沈静化は海外を呆れさせていますが、BCG日本株接種国に共通現象と判明しました。デルタ株蔓延以前の昨年1年間まとめでは、BCG無接種国や日本株に比べて弱い株の接種国では人口百万人あたりの死者が1000人前後に達していたのに、日本株接種国はほぼ数十人でした。免疫力を高める効果は間違いなく、ワクチンの対象になっていない年少者、未接種者を守っているとみられます。札幌医大のサイトで日本株接種9か国と深い沈静化が起きている国をグラフ化しました。  人口百万人あたりの直近7日平均新規感染者が100人を下回って減り続ける国は少ししかありません。日本株接種の日本、サウジアラビア、パキスタン、バングラデシュ、それに成人だけ日本株接種の南アフリカが歩調をそろえています。インドは国民の7割がコロナに対する抗体を持つと判明した国で、大流行と医療混乱の中でワクチン普及と同じような事態になったようです。インドネシアも手が付けられないほどの大混乱を起こしましたからインドと似た事情かも知れません。パキスタン、バングラデシュもワクチン接種が進んでいないのに沈静化しているのでコロナ蔓延で抗体が出来ているのでしょう。

 同じBCG日本株接種国でもマレーシアとタイは中国産ワクチン接種が大きく進んでも流行は収まっていません。フィリピンとイラクは日本で言う「ステージ4」を脱しようとしており、今後の収束がどうなるか注目です。

 第656回「日本的集団免疫が達成、迷惑かけぬ国民性で」で集団免疫が出来ていると論じました。日本の国民性が寄与と考えましたが、日本株接種諸国の日本と似た動向を見れば日本株の効きがもっと大きいようです。欧米産ワクチンが集団免疫の主な盾になっているとすれば、日本株が生む免疫は年少者などの弱い部分を塞ぐ補助盾なのでしょう。日本では10歳未満や10代の感染発生が確かに抑えられています。  欧米産ワクチン接種で抑え込んだ諸国のリバウンドぶりをグラフにしました。ワクチン完全接種率8割もあって規制緩和に踏み込んだシンガポール、順調に日常生活を回復するかに見えたデンマークの大きな反転が目立ちます。接種率87%のポルトガルやほぼ8割のスペインも揺れ戻しがあります。7割のイタリアやフランスも同様です。お隣の韓国も来月から日常回復実行を前にリバウンドです。日本の異例沈静ぶりが際立ちます。

 英国が率先して日常回復を始めた際に「ワクチン接種が出来ない子どもを犠牲にする政策」と批判した医療専門家がいました。日本からすれば信じられないほどの非常に高い感染者発生でも英国政府はまだ方向転換を我慢しています。

 昨年末の第644回「新型コロナにアジア人は欧米より強いよう」で掲げた一覧表「新型コロナとBCG効果、接種と株の差」(2020/12/29)を再録します。日本株に近い古いタイプのロシア株接種でも死者はやや抑えられています。南アフリカは2000年まで日本株接種でした。デルタ株以前の2020年分としてご覧ください。イラクは不衛生な難民キャンプでの流行がひどかった特殊事情が言われます。