第696回「インドネシア高速鉄道は深刻赤字で債務絶望」

 【10/14追補】日経新聞《インドネシア高速鉄道、中国と債務交渉》
 東南アジア初のインドネシア高速鉄道が年間600億円もの赤字を出し続け、中国からの借金で賄った1兆円余の債務を抜本的に再編せざるを得ない局面です。日経新聞の8月24日付《インドネシア、中国主導の高速鉄道が赤字深刻に 延伸計画も不透明》が、日本の新幹線を導入する計画を、財政負担なしとする中国案に寝返った末路が悲惨になっていると伝えています。2023年の第680回「インドネシア高速鉄道はペイしない泥沼構造」で、金利2%の枠組では最初から採算性が無いと明らかにしました。実は中国国内の高速鉄道も日本新幹線の15倍以上、5万キロも開通したのに建設費120兆円以上を償還できない赤字垂れ流し体質です。  2023年10月開業で、今年6月末までに累計乗客数が1000万人に達しました。日経新聞の記事によると《収益面では深刻な課題を抱えている。インドネシア中国高速鉄道社(KCIC)には国鉄クレタ・アピ・インドネシア(KAI)などの国営企業連合が60%、中国系企業が40%出資する。KAIによれば、国営企業連合は24年に4兆1900億ルピア(約380億円)以上の最終赤字を計上した。赤字額は前年比で4倍以上増えた。中国側の損失も加えれば、KCICの赤字額はさらに大きい》

 インドネシアkompas.comの報道によると、今年前半の赤字も同様の規模に上っており、中国側と合わせた赤字は年間600億円にもなる計算です。

 《高速鉄道の採算が低い理由は、運行距離が140キロメートルと短く、利用の層が限定されるためだ。このためインドネシア政府はジャワ島を横断するスラバヤまでの延伸構想も打ち出してきた》と記事に書かれていますが、それは好意的に過ぎます。最初から見通しを誤ったからであり、巨額投資が要る500キロの延伸も困難です。

 kompas.comの最近の報道を詳細に調べると、建設当初の可能性調査で悲観的なシナリオでも1日あたり5万人の乗客を運ぶと考えられたのに、《現実には、悲観的な目標の40〜50%しか達成されていません》との現状が浮かび上がります。《楽観的なシナリオでは1日あたり7万6000人の乗客数に達する》とありますから、当初から見込み違いも甚だしいところです。(元のインドネシア記事

 債務再編の方法としては、高速鉄道国有化や債券発行による方法が考えらえているようです。国鉄KAIに債務を背負わせて赤字がますます拡大すれば、正常な鉄道運営が出来なくなるからですが、非常に困難と思えます。日本からの政府が保証するなら0.1%の超低利融資するとの提案を蹴って、「インドネシア政府の負担は不要で、民間ベースの建設・運営をする」との中国側の甘言に踊らされて、この有り様です。

 中国側でも「インドネシア高速鉄道は失敗だった」との認識が広がっているようです。「インドネシアの轍は踏みたくない」との認識がアジア各国で共有されるようになっているからです。もっとも一帯一路「債務の罠」方式でインドネシアから資源など分捕れる物は取ればよいとも考えているでしょう。

 中国の高速鉄道が不採算体質である点は2018年の第590回「中国でペイ出来ない高速鉄道を途上国に押し売り」で指摘しました。その後、最も黒字を出していると誇る北京ー上海路線ですら、建設費の償還は考えていないと確認しました。

 日本新幹線の15倍以上もの長大路線建設に投じた120兆円が宙に浮いているのです。国策で大過剰生産している鉄鋼とセメントの大浪費先と見れば、中国としてはそれなりの合理性がありますが、普通の資本主義社会では異常です。

 また、中国の40都市にも広がる地下鉄網建設、香港・マカオ・珠海間の全長42kmの港珠澳大橋をはじめとした高速道路などインフラ建設も需給を考えない、GDPを増やすための手段でしかなく、正常な経済行為ではなかったと判明しつつあります。事業としてペイしていないのですから、社会全体で積み上げた膨大な債務が返済不能になっていきます。債務を数える単位が兆円の範疇を超えて「京円」に達したとの観測さえ出ています。この恐ろしさを中国政府の経済官僚は感じていないのでしょうか。習近平主席には見えていないようです。

 【追補】日経新聞《インドネシア高速鉄道、中国と債務交渉 赤字止まらず「時限爆弾」に》が《インドネシア政府が同国の高速鉄道を巡り、建設費用の大半を融資した中国と債務再編の交渉に入った。事業は政府が日本案を蹴って中国案を採用した。間もなく開業2年だが、赤字に歯止めがかからず経営危機に直面しており、政府の財政負担が拡大する可能性がある》と伝えました。