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団藤保晴の |
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第24回「高速増殖炉の旗は降ろすべくして」
(97/10/23)
重なる動燃の事故をうけて、原子力委員会の下に設けられている高速増殖炉懇談会は10月14日、原型炉もんじゅの扱いを含めた報告書案「高速増殖炉研究開発の在り方」をインターネット上で公開した。それから1カ月間にわたって国民から「意見募集」をする。高速増殖炉懇談会は今年2月のスタート以来、インターネットで審議経過を流し続けており、審議に招いた専門家が持ち込んだ資料類もスキャナーで取り込んで、画像として提供する念の入れよう。その報告書案は「高速増殖炉の実用化を白紙に戻す内容」と報道されている。 ◆もんじゅの運転再開はあるのか もんじゅ事故は、同じ原子力発電である軽水炉側が曲がりなりにもこの20年ほどの間に積み上げきた安全確保手法とは、遠いところで設計された原子炉であることを、まざまざと見せつけた。火災が起きても運転側はほとんど為す術がなかったし、大規模火災の場合に最後の手段である高温ナトリウム材の緊急抜き取りは、注入先容器への熱衝撃が怖くて容易に発動できない。実際には一度発動すると、二度と使えないから廃炉にするしかなくなる。もともと軽水炉の緊急炉心冷却装置(ECCS)に当たるものを持たない。「持たなくてよい」と動燃は主張するのだが、それは事故事象の進展に対する想像力の欠如を自白しているだけではないかと、最近思っている。少なくとも、軽水炉では事故の進展ぶりはあらかじめすべて把握しておくのが原則で、ある場面で条件によって「あちら」と「こちら」に分岐して、次の局面では……と続くイベント・ツリーが出来ている。これがあるから、本当に正しいかどうかは置くとしても事故の発生確率が議論できている。 ナトリウム漏れが起きて、燃え上がりながらナトリウムは床に落ちた。ナトリウム化合物の堆積した床には、厚さ6ミリの鋼板製ライナーが敷き詰められていた。こんなに厚い床ライナーを敷くのは、ナトリウムが建物の構造材コンクリートに接触するのが恐ろしいからだ。コンクリートは固体のように見えて何割かは水である。ナトリウムと接触すれば、高速増殖炉事故で怖れられている激烈な「ナトリウム−水反応」が起きる。事故後の観察で、もんじゅの床ライナーには1ミリ強の窪みが出来ていた。動燃は昨年6月、もんじゅと条件を合わせた燃焼実験をし「大洗でのナトリウム実験の結果について」として報告している。その観察結果は「6月10日に実験装置の内部を観察したところ、床ライナ(厚さ6mmの鋼板)に長さ約10〜30cmの穴が3箇所開いていることを確認した。実験中にライナ部の温度(代表点)は最高921℃までの上昇が確認され」と、予想外のものになった。追実験したら、とんでもない大穴があいてしまったのだ。 今年1月、科学技術庁のもんじゅナトリウム漏えい事故調査・検討タスクフォースは「第22回全体会合の概要」で、ようやくこんな結論を得た。コンクリート壁からの水分放出や換気空調系からの水分供給量が、もんじゅの場合より燃焼実験のほうが多くなった結果、「水分は、漏えいナトリウムのエアロゾル(酸化ナトリウム又は過酸化ナトリウム)と反応して水酸化ナトリウムとなるが、燃焼実験−IIではエアロゾルと反応しなかった余剰水分が生じ、その水分が堆積物に作用し水酸化ナトリウムが形成された」「もんじゅ事故の場合は、酸化ナトリウムを含むナトリウムの溶融体が形成され、燃え尽きた酸化ナトリウムが下側に層をなし、そこに滴下した未燃焼ナトリウムが存在した状態で酸化ナトリウム層に浸み込みながら燃焼した。この環境下で、鉄が酸化ナトリウムと反応することで、複合酸化物を形成し、軽微な腐食が生じた。燃焼実験−IIの場合は、水酸化ナトリウムの溶融体が形成され、その上で未燃焼ナトリウムが滴下して燃焼し、酸化ナトリウム及び過酸化ナトリウムが水酸化ナトリウム溶融体中に溶け込んだ状態となった。この溶融体中で過酸化ナトリウムが解離することで発生する酸化イオンが鋼材を腐食させ」た。 燃焼実験で水分がどれだけ多かったかというと、「別紙1」にある通り、もんじゅの場合で「170から200キログラム」、燃焼実験で「300キログラム」。燃焼実験では余分の水分80キログラムが存在したために、床ライナーに大穴をあけてしまった。再びナトリウム漏れが起きた際に供給水分がまた少なければ良いが、多ければ床ライナーなど二重に敷いても何ほどの役にも立つまい。「実験の条件が悪かったので本番ではこんなことは起きません」と説明されて、もんじゅの地元、福井県民が運転再開を了承するとは、私には到底思えない。2次系配管全体を不燃性の窒素ガスで密閉し直す大改造でもしなければ……。もんじゅへの危惧はこの一点に留まるものではない。 事故が起きた時のイベント・ツリーが把握されていないことは、電力中央研究所の「高速増殖炉におけるナトリウム・コンクリート反応に関する調査報告」にも「米国、フランスなどの研究も化学反応に重点を置いた内容であることは同様であり、反応後のコンクリートの力学的特性変化に関する検討は皆無に近い」とある。大甘の好条件を繋ぎ合わせた事故解析能力しか持たない人たちに運転は任せたくない。 ◆「実用化白紙」は本当か 30日の懇談会に提出された近藤駿介・東大工学部教授の「報告書案に対する意見」に、私はその背景を見つける。懇談会の基本的立場を「これらを踏まえて、懇談会は『開発中止』、『開発を既定方針に従って継続する』のいずれをも採らず、これが技術的社会的に将来の原子力発電技術の有力なオプションとなりうるかを明らかにする視点から研究を行うことが妥当とした」と述べ、最後に「電気事業者にとっては、これから新設しようとするプラントの寿命中にウラン資源価格が有意に上昇する見通しが生じた場合において、実証炉が高い信頼度で運転していてこれらの不安が解消され、核燃料サイクルの経済性も展望でき、その社会的受容性かあると判断されたとき、発電炉として高速増殖炉を建設候補に取り上げることになることを、開発にあたる者は肝に銘ずべきである」と結ぶ。 「これまでの開発方針とそんなに違うものではありませんよ」と、開発関係者へアナウンスしたのだと私には感じられる。近藤教授は「いまさら報告書案は書き直せないかもしれないが」との趣旨を冒頭で述べているが、実際にトーンダウンは行なわれた。その意味するものは、今後の高速増殖炉予算の付け方を監視していれば判断できるだろう。 ◆答えられない実証炉の位置づけ 質問=「実証炉の炉型を、『トップエントリー方式ループ型炉』に決定したというのは、あまりにも性急である。また、もんじゅのチェック・アンド・レビューを行う前から、炉型を決めてしまうのは問題である。さらに、新しい炉型を開発する以上、再び実験炉から始めるのが適切である」 違う炉型のパーツを繋ぎ合わせて使うのだが、それぞれの炉型については調査済みなので問題ないという議論だ。エンジニアリングの立場からすると、動燃のいい加減さとほぼ同じ体質と言える。 質問=「『実証炉』とは『商用炉の試作炉』を指すというのが、この分野での世界の常識であるように思う。今の科学技術庁の定義を明記してほしい」 質問=「実用炉としての『技術体系の確立』を判定するには、実用炉の試作炉を作り、高い信頼性を誇る運転を成功させる以外に方法がないと思う。それ以外の方法があると考えるのならば、どのような方法によるのかを具体的に示していただきたい」 しどろもどろの答弁になっている。質問している吉岡教授は文系の研究者なのに、回答側は技術が分かっている人が書いているとは思えない。国会答弁用に似た言葉の羅列である。旗を掲げるなら、胸を張って高く、誰にでも見えるように掲げるべきだ。誰かが先を走っているから、それを追走すれば間違いないと掲げていた高速増殖炉の旗を、ランナーがたった1人になった今、降ろす時が来たのは当然かもしれない。 無料メールマガジンとして配信中。登録される方はこちらへ
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