団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

第51回「コンビニの元気に見る物流変革」 (98/06/04)

 百貨店・スーパーマーケット業界が前年比で実質マイナスを続ける中で、コンビニエンスストアだけは強気の成長を維持している。この通常国会で大規模小売店舗法(大店法)に代わって環境対策に力点を置く大店立地法が成立し、大店法による規制は緩和される方向。大型スーパーなどに有利な展開になりそうなのに、赤字を計上したダイエー以下、顔色は冴えない。大店法規制で早朝・深夜の営業時間を厳しく制限されたスーパー側が、店舗面積が小さいコンビニ・チェーンを作って規制の枠を逃れ、隆盛になった経緯があるが、今や本家を脅かすほどに育ってしまった。情報端末まで店頭に入れ、取り扱いサービスは広がるばかり。この夏から秋にかけて、国内航空大手3社の航空券販売が本格的に始まる。

◆非効率的だった国内の流通業

 大阪市立大のインターネット講座で、「日本的流通システムが変わる」と題して商学部の加藤司助教授が本格的な講義を展開している。「第2回 流通暗黒大陸に仕掛けられた罠」を紹介したい。「表-1 流通業の国際比較」に示されている人口1万人当りの小売店数は、日本の「120」に対して、欧米はぐっと少なく、アメリカ「60」、イギリス「61」、フランス「81」、西ドイツ「69」である。

 「日本とアメリカを比較すると、人口がアメリカが日本の2倍であるにもかかわらず、小売店数はほぼ同じ、150万店あります。小売の人口1万人当たりの店舗数は、日本が120店で、当然のことながら、アメリカの2倍です」「人口分布がほぼ等しいとすれば、店舗密度が高く、それだけ規模が小さいことを意味しているはずです。このことは、小売1店当りの小売就業者数が、日本のアメリカの半分にも達せず、しかもその就業者1人当りの売上が小さいことからも理解できるでしょう。なお、小売1店当りの小売就業者数で見ると、フランスの方が日本よりも規模が小さくなっていますが、1人当りの売上は大きく、いわゆる就業者1人当りの生産性は高くなっています。つまり、日本の小売業は(略)『零細・過多、低生産性』という特徴をもっているのです」。

 これから講義の議論は流通業にまつわる統計的理解の隘路に進むのだが、我々はもっと単純に、コンビニについて見てみたい。

 通産省の「1997 我が国の商業〜転換期にある商業〜」は、躍進するコンビニ業界について「売場面積1平方メートル当たりの販売額は、百貨店(147万円)、コンビニ(128万円)が高く、百貨店は減少したが、コンビニは増加」「コンビニは、『長時間営業』、『近隣立地』等、消費者のライフスタイルの多様化に対応する業態として商店数が増加(15.7%増)。コンビニ間の距離は、平均では約1.6km、東京では500m毎に1店」とまとめている。コンビニ1店が成立する人口はかつて5,000人とも言われたが、現在は2,000人くらいとされ、大手に中堅クラスも加わって、地方都市にまで店舗網拡大の勢いを強めている。

 「急成長を遂げるコンビニエンス・ストア業界」は言う。通産省の商業統計調査で平成6年と前回の平成3年を比べると「全国の小売店の年間販売額は、143兆3,251億円で、前回調査比0.7%の伸びにとどまった。これに対し、コンビニの年間販売額は8兆3,251億円で、前回調査比19.3%増となっている。売上高では百貨店(10.6兆円)、総合スーパー(9.3兆円)に迫るところまで来ており、近い将来これを追い越すものとみられる。また、24時間(終日)営業店の年間販売額は同46.5%増と驚異的な伸びを示している」。

 この国の流通業における首座が、間もなく入れ替わろうとしている。それは、流通業界の都合によってできた従来型のシステムが、消費側主導に変わることでもある。

◆POS情報管理は極限にまで

 「販売機会ロスや商品ロスの削減を目指す物流機能の高度化」で示された一覧表に見える、コンビニ業界の商品ごとの合理的運び方は徹底しており、今更ながら驚く。例えば牛乳・総菜は摂氏5度に管理し、弁当・おにぎりは18度管理で1日に3度の配送。ドリンク・雑誌は週に6回、冷凍食品と加工食品・菓子は週3回、雑貨は週2回といった具合だ。

 全国5万店とみられるコンビニは、平均的には100平方メートル程度の店舗に3,000種の商品を並べる。その3分の2程度は1年間で替わってしまうと言われる。この狭い店で、さらに例えば朝とお昼時で、商品構成を入れ替えてしまおうとの動きが始まろうとしている。店の立地によって時間帯ごとに訪れる客層が違う。それなら、細かいところまで、その客層に最適な商品構成にしようというアイデア。その裏付けは、販売時点情報管理「POSシステム」によるデータ収集である。

 今やコンビニの主要な取扱商品に成長したゲームソフト。大手4つのチェーン約1万5,000店の販売ルートを管理している「ゲームソフト流通システム」が扱う世界が、端的に情報処理の規模と密度の凄さを示してくれる。

 「コンビニエンスストア店のPOS情報はチェーン本部の汎用機で集計(夜間)され、ゲームソフトの前日分の売上データがデジキューブ電算機センターへ高速デジタル回線で送られます。この情報が数十万件から数百万件の量となります」。その情報の形式はチェーンごとに違うという。敢えて汎用の大型コンピューターを使わないのがポイントであり「4台のUNIXサーバによる並列処理でデータ処理を実行。各コンビニエンスストアチェーンごとに瞬時に店別/商品別在庫を算出します。この結果に基づき物流を担当する佐川急便の日本全国28拠点の地域物流センターに出荷指示が出されます」。

 大ヒットソフトは1日に20万の注文が来たりする。1台の汎用機に頼っていないため、故障からの立ち上がりも極めて迅速で、発注から、原則1日で納品するという。

 コンビニ店が扱う多数の取扱品を小口配送で、店ごとに届けるには、従来のようにメーカーや卸に発注して、店まで運んでもらうのでは時間がかかり、往々にして店頭欠品が避けられない。

 業界最大手のセブンイレブンは、自社チェーン向け専用の新しい卸会社まで設立する動きに出た。「新しい動き:業態小売業専用卸の創設」は、「新会社設立の目的は、メーカーとの商品情報共有化の徹底。セブンイレブン・ジャパンと卸・メーカー間をオンライン化し、販売情報を即時管理することで適正在庫を確保します。同社では『これまでは玩具や化粧品などの一部の商品で、メーカーでの在庫切れによる発注制限があった。今後は店頭情報とメーカーの生産ラインを機能的にリンクさせて、欠品などを防ぐ』としています」と伝えている。

 これに加わったメーカーには、現場の販売情報がフィードバックされるのだ。消費側主導の流通の、ある意味で極限だろう。もちろん、コンビニには消費者の欲しいもの全てが並んではいないのだから、「作られた」主導性であるが。

◆コンビニ繁栄が映す世相

 中学生から29歳までの男女2,000人を対象に、生活上なくてはならない小売業は何か、数に制限なく挙げてもらう調査('96年実施)が「若者消費心理学」で紹介されている。

 「必需感を持っている人が最も多いのは、コンビニエンスストアで69.2%にもなっている。これにスーパーマーケット(52.7%)・自動販売機 (47.8%)が続いている」「百貨店は32.1%で自動販売機をかなり下回っている」「男女別に見ると、男性ではコンビニがトップで72.4%、次は自販機(53.7%)だった。女性では、やはりコンビニ(66.4%)・スーパー(64.4%)の順で以下、自販機(42.5%)・百貨店(41.9%)と続く」「同じアンケートを'94年にも実施しており比較してみると、百貨店の急落が著しく、11.9%ポイントも減少している」。

 この層が今後の消費の主役になっていくのだから、百貨店などが頭を抱えるのは当然のことだろう。この連載第1回「空前の生涯独身時代」で、晩婚化などという生やさしいものではなく、生涯独身者の割合が増え続けることを示した。そうした独身生活者にはコンビニは不可欠な存在になっている。

 「コンビニ・マニア」とでも呼べるホームページもいろいろ出ている。「コンビニ倶楽部」にある、スナック菓子の食べ比べ情報など、若い世代の会話の中身はこうなのだろうなと、類推させてくれる。「3倍得するLAWSON」の作者は結構まじめに数多くの試食レポートを書いていて、コンビニで提供される食べ物の質が少し前とは違ってきていることの「証」にもなっている。

 卒論やゼミのレポート題材としても格好のものらしく、随分ある。その中から例えば「商品別流通機構の研究」を挙げる。

 小売業の現場を戦っている人たちには大変な時代だ。チェーン加盟に悩むQ&A「単独店経営のとるべき道は?」を読んでいると、毎月高額のロイヤリティをチェーン本部に支払って、POSデータに支配された経営をするのも「商人」として面白くないと感じる事情が分かる。その一方で、単独店で時代を乗り切るほどの商品知識と先見性があるのか、これも辛いところだ。熊本日日新聞が連載で取り上げている「解約 本部と加盟店 意識にズレも」の問題意識にも通じる。

 「『対話広げ、要求結集を』=コンビニ全国協議会・第1回代表世話人会」は、チェーン本部との間でトラブルが各地で発生している状況を伝えている。

 コンビニ同士が至近距離に店を構えるようになった現在、もともと価格が安いことを売り物にしてはいないのだから、商品企画の弱いチェーン側は淘汰されざるを得ない。既にそれぞれ7,000店を抱える2大手のセブンイレブンとローソンは、1万2,000店を目標に掲げ拡張を続けている。大競争の時代は、さらに多数の人々を巻き込んで行かざるをえない。



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