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第1回「空前の生涯独身時代」 (97/05/08)

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 次の世紀の初めにはこの国の人口がピークになって、世紀半ばには今より2,500万人も減って、1億人ぎりぎりになるらしい。そんな厚生省の国立社会保障・人口問題研究所が出した「予測」を、ちょっとひっくりかえして男と女の個人生活の立場からみたらどうなるのか、というのが今回のテーマだ。そこに見えてくるのは、男性4人に1人は生涯結婚しない、あるいはできないかもしれないという、空前の「生涯独身時代」の到来である。

◆人口の増減には生涯未婚率が効く

 いろいろと書かれている数字や専門用語の中から注目したいのが「生涯未婚率」。晩婚化と言われて久しいが、こちらは生涯結婚しない人の割合だ。独身で50歳を超えたら生涯未婚と数える決まりで、女性の場合、結婚してもまず子供ができないであろうから、人口に影響しないのでこう定められた。その女性の生涯未婚率が、'41〜45年生まれでは「4.6%」なのに、'80年生まれでは「13.8%」まで進むと予測されている。人口の増減には非常に効くファクターだ。では、男性の生涯未婚率はどう動くのか。

 '95年国勢調査の集計結果が、総務庁からこのところ相次いで発表されている。集計には一部のサンプルだけで先行する速報値と、全部が終わった確定値とがあり、速報段階のものもまだ多い。その数字で過去の国勢調査と比較した「男女、年齢(5歳階級)別未婚率の推移」から抽出したのが下の一覧である。

年齢 男性 女性
'80確定 '90確定 '95速報 '80確定 '90確定 '95速報
20〜24歳 91.5% 92.2% 92.3% 77.7% 85.0% 86.5%
25〜29歳 55.1% 64.4% 66.4% 24.0% 40.2% 49.0%
30〜34歳 21.5% 32.6% 37.3% 9.1% 13.9% 19.9%
35〜39歳 8.5% 19.0% 22.6% 5.5% 7.5% 9.7%
40〜44歳 4.7% 11.7% 16.5% 4.4% 5.8% 6.6%
45〜49歳 3.1% 6.7% 11.4% 4.4% 4.6% 5.7%
50〜54歳 2.1% 4.3% 6.8% 4.4% 4.1% 4.7%
55〜59歳 1.5% 2.9% 4.5% 3.5% 4.2% 4.2%
総務庁「男女、年齢(5歳階級)別未婚率の推移」より

 30代あたりの未婚率がどこまで下がるかが分かれば、生涯未婚率の行方が見える。50代のほうが40代よりも未婚率が下がるように見えるが、比較すべき同一世代は年とともに右下に移動することに注意してほしい。5年後なら1つ、10年後なら2つ移動する。男女ともに40代に入ったときの未婚率からそう下がることはない、と見て取れよう。男性の「40〜44」世代の未婚率「16.5%」がほぼ生涯未婚率になり、「40〜44」世代がこの5年間に2.5ポイントしか未婚率を下げなかった点からみて、「35〜39」世代の生涯未婚率は「20%」程度に落ち着きそうだ。それぞれの世代で女性側の未婚率を比べてほしい。まだ1桁にすぎない。もともと生物学的に弱い男性のほうがかなり多く生まれる仕組みであり、世代間の波もあって適齢期の男女数にギャップがあるので先のことまで簡単には見通せない。が、'80年生まれの女性で生涯未婚率が「13.8%」まで進むとき、男性側の生涯未婚率は「25%」に迫るだろう。つまり男性の4人に1人は生涯独身の時代が来る。

 しかも、東京は'90年国勢調査の集計でも生涯未婚率が全国平均より一段と高率で10%を超しており、全国の変化を先取りする形になっているので、大都会ではかなり早い時期に空前の大量独身者社会を見せてくれるだろう。一方、'90年調査で男性の生涯未婚率が東京の3分の1以下だった県には、奈良、富山、石川、福井、岐阜、滋賀、佐賀、大分、鳥取、三重、岡山、青森などがあげられる。このリストから、私には宗教的・地縁的な影響が大きく出ていると思えてならない。

◆国際結婚へ動く

 「人口問題に関する意識調査」の結果でも、生涯独身志向が高まっている。各種のサービスがある都会でなら、独身でも不自由はない時代になった。その一方、男性側は経済的な苦しさから結婚が遅れている点は、調査のポイント紹介としてさらりと触れられているだけだ。女性の職業面での自立、高条件志向、仕事をもちながらの育児・家事の不利など、結婚のハードルは高くなっている。

 結婚したくてできない男性に、国際結婚の動きがある。「夫婦の国籍別にみた婚姻件数の年次推移」という法務省データよると、10年ほど前から国際結婚の数が増え始め、20年前の4倍以上、年間27,000件にも達した。この間、夫が日本人のケースは6倍増なのに、妻が日本人のケースは倍増にとどまっている。夫が日本人の場合、妻の国籍はフィリピン、中国、韓国・朝鮮がベスト3だ。かつてトップだった韓国・朝鮮が3位まで落ちた。実は経済発展の結果、韓国の農村部でも花嫁不足に陥り、中国やロシアなどに住む朝鮮系の女性を斡旋、迎え入れたりしているという。

 こうした事情を反映して、インターネット上でも国際結婚の紹介が花盛りだ。たとえば「幸福天使国際結婚紹介所」あたり。個々のホームページを歩いてみると、訪問者のカウンターが数千から万の単位に届いているところがよくある。若くて健康そうな中国人女性の写真を、これでもか、これでもかと並べているのにいささか圧倒される。私の印象では、このような国際結婚斡旋業者が都内で目立ちだしたのは5年以上前だった。あちこちの過疎の町村に異国の花嫁が突然現われたりもしたが、すでに珍しい存在ではなくなり、彼女たちを支えるボランティア組織が各地にできたりしている。

 業者による斡旋ではなく、自然な出会いによる国際結婚を報告するホームページが散見されるところが、生活日記風ホームページがあふれる、現在のインターネットらしいかもしれない。例としては「ぷーちゃんとてんもの国際結婚体験話」など。

◆日欧 VS.米国

 国内の動きは分かったが、それでは海外はどうなんだろう。「平成8年人口動態統計の年間推計」の最後の部分に、主な人口統計値の国際比較がある。「婚姻率」(人口1,000人当たりの婚姻件数)でみると、日本の「6.4」は、英国の「5.9」、ドイツの「5.4」、フランスの「4.7」といった欧州諸国に近づいたことになっている。欧州ではフランスや北欧などで、比較的早くから生涯独身が10%を超える割合になっていた。しかし、これから先の日本の「生涯未婚率」急増傾向は、軽く欧州諸国を超えてしまう勢いだ。

 気になる米国は婚姻率で「9.0」と断然多く、日欧とまったく違う位置に立っている。未婚の女性も含めて女性が一生に産む子供の平均数「合計特殊出生率」が「2」ならば、人口は長期的に維持される。この指標が「1.42」まで落ちた日本に対し、米国は一時の下降状態から盛り返して「2.05」もある。米国は離婚の頻度も別格の高さではあるが、結婚して子孫を残すというホモサピエンスの営みでは、日欧よりも自然なありようになっている。人種のるつぼ、成功を求めて移民が絶えない国は、依然として新世界の活力を維持し続けるのだろうか。


 【2013年最新】第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」

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