第543回「脱未婚=結婚へ動き、30代から中高年まで活発に」

 2015年国政調査集計が終わって分析したところ生涯未婚で終わらない、結婚への動きが30代から60代の高年齢層まで活発化していました。これに対して20代は男女とも従来からの非婚化傾向を維持して対照的です。国立青少年教育振興機構が昨年末に実施した《若者の結婚観・子育て観等に関する調査》は2008年の同じ調査に比べて《「早く結婚したい」と「いい人が見つかれば結婚したい」の割合が低下し、「いつか結婚したい」と「結婚したくない」の割合が上昇している》としています。一方で年収に余裕がある層ほど結婚志向が強い点も明らかにしており、東日本大震災後に広がった絆志向が余裕がある30代以上を「脱未婚=結婚」に踏み切らせた可能性があります。  表の左半分は国政調査の世代別未婚率を1995年から2015年まで並べてあります。未婚率推移を見る限りでは2015年に男性の30代でわずかに減っただけで非婚化に大きな変化は読み取れません。しかし、同じ世代が5年間に取った行動を計算で割り出すと劇的な変動が発生しているのです。5歳の階級別になっているために、同じ世代が5年後の次の調査では5歳年上のところに移動します。表の右半分は同世代の5年間での未婚率低下です。黄色の部分で過去3回の脱未婚行動とは異なる著しい低下が現れました。「-5.8→-7.8→-8.9→-10.6」と動いた女性30代後半は5年間で10.6%も結婚です。(なお、2005→2010で統計の誤差から一部にプラスが生じ異常ですがそのままにしてあります)  過去からの変動を見やすくするために25〜29歳、30〜34歳、35〜39歳、40〜44歳、45〜49歳で男女別に未婚率低下ポイントをグラフにしました。グラフが下に向いているほど結婚に動いている傾向を示します。20代後半だけが男女ともに上昇か横ばいになっているのに対して、他の世代が一斉に下向きに転じました。男の一番上のグラフ40代後半が「-1.7→-1.1→-0.2→-2.7」と動いて、2010年調査で結婚はほぼ終息したはずだったのに2015年調査で大きく復活しました。男女とも40代は同じ動きです。30代は一足早く「2005→2010」で既に結婚に向けて動くトレンドが出来ていたとも言えます。

 人口学では生涯未婚率を50歳時点と定めています。これ以降はほぼ子どもが作れなくなって人口の増減に影響しなくなるからです。今回の分析で注目は50代、60代で男女ともに未婚率を減らす動きが根強い点です。寂しい老後にしたくないとの思いが独身貴族だった男女の行動を変えているかもしれません。大震災後にニュースになった結婚願望は比較的若い世代が中心で、その後は収まったように言われました。中高年層には絆志向がもっと強く浸透したのでしょうか。

 この分析から50歳時の生涯未婚率を占うことが出来ます。年上世代が取った脱未婚行動を年下世代も踏襲すると仮定すれば、今の30代は男性で26%を割り込み、女性では18.6%ほどで収まってしまいます。今回調査の傾向が持続すれば50代以上でも結婚していくので本当の生涯未婚率はぐっと下がるでしょう。前回の非婚化が進んだ国勢調査で第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」を書いたのですが、今回調査によって全く様変わりの様相になりました。なお、8月の抽出集計速報が出た段階で第538回「生涯未婚率が劇的に改善か、2015国勢調査を分析」を書いています。