第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」
[This column in English]
2005年国勢調査の速報集計結果が公表され始め、65歳以上人口の比率21.0%は世界最高、15歳未満人口の割合13.6%は世界で最も低い水準と少子高齢化が歴然とした。しかし、大きな論点が語られていない。2000年国勢調査では独自に分析した結果、出会い系サイトなどが思わぬ力を発揮して第107回「非婚化の進展をITが阻み始めた」を書くほど非婚化に一定の歯止めが掛かった。今回はその傾向が進むかと楽しみにしていたが、結論から言うと、非婚化への歯止めは大きく息切れしてしまい、生涯未婚率上昇が加速した。男性なら今の30代後半は4人に1人、20代後半は何と3人に1人が生涯独身を通す可能性が高い。女性は男性より生涯未婚率は大幅に低かったが、今の20代、30代は同世代男性に急接近しそうである。
分析の方法は5年ごとに実施されている国勢調査の特性を利用して、5歳階級の世代ごとに過去6回調査間の5年間で未婚率を減らした%ポイントを計算する。「脱未婚ポイント」と名付けて集計すると、各世代がどの時期に、どのくらい結婚してきたのか一覧できる。以下に計算結果を示す。 生涯未婚率は人口学上の概念で50歳時点での未婚率である。女性なら結婚しても子どもが出来る可能性が極めて低くなるので、そう定めた。男性でも50歳以上での結婚は少ない。若い世代の将来の結婚行動を見通す手段として、年上世代がそれぞれ直近の5年間にした「脱未婚ポイント」を積み重ねると仮定する。つまり、20代後半男性は現在72.6%の未婚率であり、30代前半世代の脱未婚21.6ポイント、30代後半世代の脱未婚12.0ポイント、40代前半世代の脱未婚3.8ポイント、40代後半世代の脱未婚1.1ポイント、50代前半世代の脱未婚0.6ポイントを合計した39.1ポイントしか未婚が減らないなら、差し引き33.5%が生涯未婚で残ると考える。
50代以上は現実の未婚率、40代以下はこうして計算した推定の未婚率を採って生涯未婚率グラフにすると以下のようになる。2000年調査では40代、50代の男性に結婚熱が再燃して、動向次第では生涯未婚率を大きく動かすとも見えた。2005年になると、ずっと上の世代に比べると結婚への動きは活発ながら、2000年に見えたほどではない。例えば、50代前半男性は2000年までの5年間に1.1%も未婚率を下げたが、次の同世代は2005年までの5年間では0.6%下げただけだった。年上世代の結婚行動を年下世代も踏襲すると仮定すれば、このようなグラフになってしまう。 2002年に実施された国立社会保障・人口問題研究所の「第12回出生動向基本調査・結婚と出産に関する全国調査・独身者調査の結果概要」は「現在結婚することに利点があると感じているのは未婚男性の6割(62.3%)、未婚女性の7割(69.4%)であった。逆に男性の1/3(33.1%)、女性の1/4(26.3%)は結婚に利点はないと考えている。男女とも利点を感じない人がわずかずつ増えており、とりわけ男性で明瞭である」と分析し、「利点がない」とする割合が20代後半の生涯未婚率推定値とほぼ同じである点が示唆的だ。
この調査は「国勢調査から推定される配偶関係の構成と本調査から得られる未婚者の異性交際の状況から、各年次、各年齢階級における異性のパートナーシップの状況を推定」しており、こちらも興味深い。元のグラフを是非、見てほしいが、20-24歳の一部分だけ数字を拾っておく。 15年前と比較すれば、「恋人あり」や「同棲」が増え、逆に「交際相手なし」も増える、男女交際の両極端化が進んでいる。青春真っ直中、20-24歳の男性に交際相手なしが50%もいるとは、「それほどに仕事漬けなのか」「いったい何をして日を送っているのか」と聞きたくなる。
もうひとつ、同棲経験について「25〜29歳での増加が目立ち、今回調査では男性10.3%、女性10.0%と初めて1割に達した。しかしながら、現在同棲を継続している未婚男女は、最も多い25〜29歳でも3%足らずであり、いまだ少数派である」と報告している点も目を引く。
廣嶋清志・島根大法文学部教授が「人口学からみた性別――晩婚化・非婚化の原因と展望」でここに取り上げた非婚化や晩婚化について論じている。「多くの曲折はあるとしても基本的には結婚を含む社会関係が全体的に自立した個人間の関係へ変化する過程であり、また女性の社会的地位向上の過程ということができるであろう」「欧米の第2の人口転換といわれる過程は、同様の本質を持つものであるが、比較的多くの国で同棲が増加し、出生率低下を緩和している点で日本と異なっている」「日本の社会変化がいっそう進行すれば、いままでみてきたように、おおむね逆に晩婚化・非婚化を緩和していくものと考えられる。しかし、それがいつ頃になるかを予測するのは難しい」
生き物として子孫を残すのは本質的な行動なのだが、日本の社会状況では、ままならないことも理解できる。しかし、20代の男女で「交際相手なし」が50%とか38%と知り、生き物としての「ひ弱さ」を思うのは私だけだろうか。また、4人に1人、3人に1人と、これほど多数の生涯独身者を出すのなら、老後の生活保障や高齢者介護など社会システムの備え方も従来と大きく変えねばならない。
※7/23に続編「非モテ」意識と親同居独身者の増加 [ブログ時評60]をリリースしました。
分析の方法は5年ごとに実施されている国勢調査の特性を利用して、5歳階級の世代ごとに過去6回調査間の5年間で未婚率を減らした%ポイントを計算する。「脱未婚ポイント」と名付けて集計すると、各世代がどの時期に、どのくらい結婚してきたのか一覧できる。以下に計算結果を示す。 生涯未婚率は人口学上の概念で50歳時点での未婚率である。女性なら結婚しても子どもが出来る可能性が極めて低くなるので、そう定めた。男性でも50歳以上での結婚は少ない。若い世代の将来の結婚行動を見通す手段として、年上世代がそれぞれ直近の5年間にした「脱未婚ポイント」を積み重ねると仮定する。つまり、20代後半男性は現在72.6%の未婚率であり、30代前半世代の脱未婚21.6ポイント、30代後半世代の脱未婚12.0ポイント、40代前半世代の脱未婚3.8ポイント、40代後半世代の脱未婚1.1ポイント、50代前半世代の脱未婚0.6ポイントを合計した39.1ポイントしか未婚が減らないなら、差し引き33.5%が生涯未婚で残ると考える。
50代以上は現実の未婚率、40代以下はこうして計算した推定の未婚率を採って生涯未婚率グラフにすると以下のようになる。2000年調査では40代、50代の男性に結婚熱が再燃して、動向次第では生涯未婚率を大きく動かすとも見えた。2005年になると、ずっと上の世代に比べると結婚への動きは活発ながら、2000年に見えたほどではない。例えば、50代前半男性は2000年までの5年間に1.1%も未婚率を下げたが、次の同世代は2005年までの5年間では0.6%下げただけだった。年上世代の結婚行動を年下世代も踏襲すると仮定すれば、このようなグラフになってしまう。 2002年に実施された国立社会保障・人口問題研究所の「第12回出生動向基本調査・結婚と出産に関する全国調査・独身者調査の結果概要」は「現在結婚することに利点があると感じているのは未婚男性の6割(62.3%)、未婚女性の7割(69.4%)であった。逆に男性の1/3(33.1%)、女性の1/4(26.3%)は結婚に利点はないと考えている。男女とも利点を感じない人がわずかずつ増えており、とりわけ男性で明瞭である」と分析し、「利点がない」とする割合が20代後半の生涯未婚率推定値とほぼ同じである点が示唆的だ。
この調査は「国勢調査から推定される配偶関係の構成と本調査から得られる未婚者の異性交際の状況から、各年次、各年齢階級における異性のパートナーシップの状況を推定」しており、こちらも興味深い。元のグラフを是非、見てほしいが、20-24歳の一部分だけ数字を拾っておく。 15年前と比較すれば、「恋人あり」や「同棲」が増え、逆に「交際相手なし」も増える、男女交際の両極端化が進んでいる。青春真っ直中、20-24歳の男性に交際相手なしが50%もいるとは、「それほどに仕事漬けなのか」「いったい何をして日を送っているのか」と聞きたくなる。
もうひとつ、同棲経験について「25〜29歳での増加が目立ち、今回調査では男性10.3%、女性10.0%と初めて1割に達した。しかしながら、現在同棲を継続している未婚男女は、最も多い25〜29歳でも3%足らずであり、いまだ少数派である」と報告している点も目を引く。
廣嶋清志・島根大法文学部教授が「人口学からみた性別――晩婚化・非婚化の原因と展望」でここに取り上げた非婚化や晩婚化について論じている。「多くの曲折はあるとしても基本的には結婚を含む社会関係が全体的に自立した個人間の関係へ変化する過程であり、また女性の社会的地位向上の過程ということができるであろう」「欧米の第2の人口転換といわれる過程は、同様の本質を持つものであるが、比較的多くの国で同棲が増加し、出生率低下を緩和している点で日本と異なっている」「日本の社会変化がいっそう進行すれば、いままでみてきたように、おおむね逆に晩婚化・非婚化を緩和していくものと考えられる。しかし、それがいつ頃になるかを予測するのは難しい」
生き物として子孫を残すのは本質的な行動なのだが、日本の社会状況では、ままならないことも理解できる。しかし、20代の男女で「交際相手なし」が50%とか38%と知り、生き物としての「ひ弱さ」を思うのは私だけだろうか。また、4人に1人、3人に1人と、これほど多数の生涯独身者を出すのなら、老後の生活保障や高齢者介護など社会システムの備え方も従来と大きく変えねばならない。
※7/23に続編「非モテ」意識と親同居独身者の増加 [ブログ時評60]をリリースしました。