団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

急浮上!たばこ1箱1000円を実現させよ [BM時評] (2008/06/17)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 与野党にまたがって、たばこ税の大幅引き上げを求める動きが急浮上しています。6月6日の日経朝刊で最初に「1箱1000円」を見た後、各メディアを打ち上げ花火のように賑わせています。有力銘柄が1箱千円を超えている英国、500円は超えて800円前後にあるフランス、ドイツの現状に照らして、300円程度の日本は見直すべきとの主張です。仮に1000円になっても禁煙する人がいなければ、現在、2兆2000億円程度のたばこ税が8兆円も上積みされる、深刻な財政難時代に美味しい話です。

 当然ながら、そこまで値上がりすれば禁煙する人が増えます。1年前に「ニコチン依存度別に見た喫煙・禁煙の行動経済学的研究」で1000円になれば9割が禁煙するだろうと発表している京大の依田高典教授が16日、メディアの求めに応じた新しい推計を発表しています。「たばこ1000円の経済学−税収の大幅な増加には疑問−」がそれです。

 とってもホットな文書から紹介すると、禁煙しようと思う人の割合は500円なら40%、1000円なら97%。個人がどのような行動をするか判然としないものの、結論から言うと、500円なら禁煙率は余り増えず、税収は単純計算した1.5兆円増加の方向に寄っていく。しかし、1000円ならほとんどの人が禁煙してしまい、税収は最大1.9兆円減になるのではあるまいか、という見立てです。

 しかし、たばこ価格と禁煙率の関係を推定している研究者はほかにもいます。「タバコ価格550円への値上げで,現在喫煙者の約50%が禁煙する可能性が高い」をネット検索で見つけました。星城大学リハビリテーション学部・長崎大学医学部保健学科などの研究です。こちらの推定禁煙率は価格が1000円以上に上がっても80%程度で頭打ちになってしまいます。これなら1000円でも税収は増えます。

 朝日新聞に少し前に「40歳時点で喫煙・余命は4年短く 30万人調査で判明」との記事が出ています。これを紹介するブログ「タバコ吸い 余命縮めて 税払い」は前々回のたばこ税値上げの際に禁煙した経緯を書いています。「禁煙を決意したきっかけは タバコの増税です。国鉄の債務はまだ○○兆円くらい残っていて、予定より債務の返済が進まないということでタバコを25円値上げして、それを債務の返済原資にすることが決定されました。”何で喫煙者だけが国鉄の債務を負担しなくてはいけないのだ!!!”という怒りが禁煙を決意したきっかけです」

 第71回「新・たばこをめぐる日米の落差」で「『我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とするとを目的とする』と謳う『たばこ事業法』の国では、手も足もでないのだろうか」と書いた通り、税収減、つまりたばこ産業の壊滅を伴う政策変更は許されない日本国なのですが、もういい加減にしましょう。先日の第159回「メタボリックS健診は男性短命化政策」でも、はっきり書いています。全死亡に対する各リスク因子の寄与率で、男性では喫煙が24%を占めるのです。多少の税収減に見合う以上に病気は減り、税金が投入されている国民医療費は大きく減るはずです。

6/23追補=医療費問題について手近なデータを書いておきます。
「医療費分析による保健医療の効率評価に関する実証研究」は「国民健康保険加入者約5万人を9年間追跡した結果、その集団の総医療費の13.4%が喫煙・肥満・運動不足という3つの基本的なリスクによることが示唆された。これを平成15年度の国民医療費は31兆5,375億円に当てはめると、これら健康リスクにより4兆2,260億円の過剰医療費が生じていることになる」と示しています。
 喫煙だけに限ると、「喫煙による過剰医療費割合(表1)は、男性で大きく、医療費の7.4%が喫煙によるものであった。女性の喫煙による過剰医療費割合は1.2%と、小さかった」と分析しています。



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