団藤保晴の
「インターネットで読み解く!」

第191回「人間ドック学会も禁煙宣言、でもメディアは」 (2009/11/22)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 11月に入って男性喫煙率が36%と、過去5年で10ポイント下がったニュースや、来年度予算に向けて大幅増税の議論が表面化するなど、たばこ関連の動きが目立ってきました。この秋、一番の注目は日本人間ドック学会が9月の大会で「禁煙宣言」をしたことだと思っています。タバコによる健康被害がこれほど言われる中、遅れに遅れてです。ところが、なお及び腰なのがマスメディアです。記者個人の嗜好や思いこみと、市民社会の中でメディアが果たすべき役割がごちゃごちゃにされています。

 日本禁煙学会がまとめている「禁煙宣言学会等の一覧」をご覧になってください。1997年の日本呼吸器学会を先頭に臨床系の学会はあらかた宣言しているのに人間ドック学会は、「営業上の問題」から躊躇していたのでしょう。しかし、ちょっとばかりコレステロール値が高いことは問題にしながら、ヘビースモーカーであることを不問にするなんて、人間ドック本来の在り方からはとても可笑しいのです。重篤な症状が出てきたところで治療する方針で良ければ、人間ドックは不要です。

 WHOが2008年に世界規模で初めてまとめた報告「Global TOBACCO Epidemic」のメッセージは強烈でした。「20世紀の間にたばこによる死者は世界で1億人だった。各国政府が手を打たなければ21世紀には10億人の死者が出る」です。先進国の中で日本の喫煙率は突出しているのですが、現在は所得が低い国で喫煙率が急増する傾向にあります。これは人口増加が著しい国に売り込む販売戦略のためで、日本たばこ産業が国内を穴埋めするように海外のタバコ事業を買収して大きく収益を伸ばしていることから分かるように、我々とも無縁ではありません。

 日本生活習慣病予防協会の《たばこ値上げで喫煙率を減少 「1箱500円」は世界的な流れ》がたばこ価格と税率について、日本と先進各国の違いをまとめています。「米国や英国の最近の男性の喫煙率である23%に比べると、日本の喫煙率はまだまだ高い。欧米のたばこ1箱の価格は、英国843円、フランス556円、ドイツ466円、米国706円と、日本よりも大幅に高い」「日本の1箱300円のたばこにかかる税は175円で税率は58%、増税すると75%に増加すると見込まれる。これに対し、海外諸国の現在のたばこ税率は英国77%、フランス80%、ドイツ76%、カナダ69%、米国37%、ノルウェー76%、インド69%などとなっている」 >

 これまで述べた基礎データを知っていらっしゃるはずの地方紙の雄、北海道新聞のコラム「卓上四季」の「喫煙率低下(11月15日)」は「喫煙派にとって、次のハードルは鳩山政権が検討するたばこ増税となる。拍手する非喫煙派も多いが、大衆増税だ。分煙する限り、喫煙という『ささやかな自由』の機会は狭めなくていいと思うが、いかがだろう」と結んでいます。誰も自由を奪おう何てしていませんよ。「狭めなくていい」とは言い回しの貧しさに呆れます。

 あるいは毎日新聞の「たばこ税:増税、効果は 税収、消費減り減収も/禁煙促進、がん減少?/生産者は反対」です。増税は健康増進のためにするのであり、税の減収大いに結構です。税収が減らないようにじわじわ上げていく方法は、密売組織が麻薬患者から金を搾り取っていくのと同じ発想です。それに「がん減少?」と疑問符を打つ勇気は相当なものですよ。所得が減るタバコ生産農家には税収から所得補償をすれば良いだけです。WHOは「世界で毎年20兆円ものタバコ税収がありながら、タバコ規制に使われているのは0.002%にすぎない」と批判しています。

 【関連】第71回「新・たばこをめぐる日米の落差」(1999/06/03)
     第135回「たばこ依存脱せぬ日本人を考える」(2003/06/12)

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