もんじゅ驚愕の運転再開、制御棒の操作知らず [BM時評]
14年も停止していた高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が運転を再開、早速、驚きいっぱいの低技術ぶりを披露しました。読売新聞の「もんじゅミス 運転員、基本操作知らず…ボタン長押し 手順書に明記なし」などにあるとおりです。「原子力機構によると、試験終了後に原子炉の出力を落とした状態にしようと、制御棒19本のうち2本を挿入しようとしたが、1本が入りきらなかった」「原因を調べたところ、制御棒を最後まで挿入するには操作ボタンを長押しする必要があるが、運転員は制御棒の全挿入操作は初めてで、長押しが必要と知らなかった。原子力機構は運転手順書にこの操作に関する詳しい記述を追加した」
他紙によると、この運転員は短く何度もボタンを押したそうです。原発運転の基本である制御棒操作を知らなかったことも驚愕ですが、一連の事実から容易に推定できる大欠陥に気付いて背筋がぞっとしました。もんじゅ運転チームは、本格的な運転シミュレーターを持たずに、座学で運転を学んでいる事実です。模擬制御盤があれば「長押し」と「短いプッシュ」の差を体感できるようにしないはずがありません。14年の空白期間に何をしていたのでしょう。
まともな運転シミュレーターが無いということは、事故事象への対応も本格的に模擬した経験がない――と結論できます。これは大変です。原発の主流である軽水炉では、運転員を育てるために様々な工夫をしてリアルな模擬制御を訓練に使ってきました。デジタル時代の現在では簡単な模擬でも昔はかなり大変だったのですが、もんじゅが動き出す前から電力会社は使っていました。止まっている間、年間200億円もの維持費を使いながら、現代的な運転シミュレーターを新設する知恵さえ、日本原子力研究開発機構(旧・動燃)にはなかったのです。私の第187回「信頼性無し、もんじゅ運転再開は愚の骨頂」にその体質が描いてあり、不思議としません。
11日の各紙朝刊には「原子力機構が10日、午後1時までの24時間に施設内で警報が75回出たと発表」との記事が出ました。「配管室の圧力計が低気圧による気圧変化に反応した(40回)とか、大した不具合ではない」としています。試運転段階の超低出力で何も起きていないと知っているから「不具合でない」と言えるだけです。高出力運転で各機器がフル回転している際に、警報が頻繁に鳴って、それが不具合でないと断定できるでしょうか。普通の技術者なら一生懸命、考え始めます。それが何十回もの警報になれば、本当の異常が埋もれる恐れがあります。もし異常事象が起きていると分かった後での警報多発なら、運転チームはパニックになるでしょう。
3月の「口に出来ぬほどの技術的愚劣、もんじゅ再開」でこう書きました。長い休止で「各パーツを発注しただけの技術者すら退職してしまいました。安全確保のために点検すると言って、実は何をしたら善いのか、現場がどのようになっていれば正解であり、安全なのか判然としない技術陣が、巨大で危険な高速増殖炉をこれから動かすのです」――運転再開早々に現れている、笑うに笑えない愚かしさの本質はここにあると思います。
【追補】読売新聞が夜遅くなって「もんじゅ手順書に操作法書かず、訓練もなし」を掲示し、より詳しく伝えました。「長押し」ではなかったにせよ、事態の本質は変わりません。「操作ミスした運転員は、『微調整棒』とよばれるこの特殊な制御棒の操作訓練を受けたこともなく、実物をこの日、初めて操作した」「もんじゅは、出力を下げるために制御棒を最下部まで挿入する際、残り6ミリ・メートルからはボタンを小刻みに押し、慎重に下ろす手順を定めている。ところが、操作ミスのあった微調整棒は、残り3ミリ・メートルになると挿入速度が他の制御棒の4分の1に落ちる。したがって、運転員はふつう、ボタンを余計に押し続けて挿入を完了する」「そのような操作方法が手順書に明記されていなかったため、微調整棒に異常が起きたと考え、挿入作業を中止したという」
他紙によると、この運転員は短く何度もボタンを押したそうです。原発運転の基本である制御棒操作を知らなかったことも驚愕ですが、一連の事実から容易に推定できる大欠陥に気付いて背筋がぞっとしました。もんじゅ運転チームは、本格的な運転シミュレーターを持たずに、座学で運転を学んでいる事実です。模擬制御盤があれば「長押し」と「短いプッシュ」の差を体感できるようにしないはずがありません。14年の空白期間に何をしていたのでしょう。
まともな運転シミュレーターが無いということは、事故事象への対応も本格的に模擬した経験がない――と結論できます。これは大変です。原発の主流である軽水炉では、運転員を育てるために様々な工夫をしてリアルな模擬制御を訓練に使ってきました。デジタル時代の現在では簡単な模擬でも昔はかなり大変だったのですが、もんじゅが動き出す前から電力会社は使っていました。止まっている間、年間200億円もの維持費を使いながら、現代的な運転シミュレーターを新設する知恵さえ、日本原子力研究開発機構(旧・動燃)にはなかったのです。私の第187回「信頼性無し、もんじゅ運転再開は愚の骨頂」にその体質が描いてあり、不思議としません。
11日の各紙朝刊には「原子力機構が10日、午後1時までの24時間に施設内で警報が75回出たと発表」との記事が出ました。「配管室の圧力計が低気圧による気圧変化に反応した(40回)とか、大した不具合ではない」としています。試運転段階の超低出力で何も起きていないと知っているから「不具合でない」と言えるだけです。高出力運転で各機器がフル回転している際に、警報が頻繁に鳴って、それが不具合でないと断定できるでしょうか。普通の技術者なら一生懸命、考え始めます。それが何十回もの警報になれば、本当の異常が埋もれる恐れがあります。もし異常事象が起きていると分かった後での警報多発なら、運転チームはパニックになるでしょう。
3月の「口に出来ぬほどの技術的愚劣、もんじゅ再開」でこう書きました。長い休止で「各パーツを発注しただけの技術者すら退職してしまいました。安全確保のために点検すると言って、実は何をしたら善いのか、現場がどのようになっていれば正解であり、安全なのか判然としない技術陣が、巨大で危険な高速増殖炉をこれから動かすのです」――運転再開早々に現れている、笑うに笑えない愚かしさの本質はここにあると思います。
【追補】読売新聞が夜遅くなって「もんじゅ手順書に操作法書かず、訓練もなし」を掲示し、より詳しく伝えました。「長押し」ではなかったにせよ、事態の本質は変わりません。「操作ミスした運転員は、『微調整棒』とよばれるこの特殊な制御棒の操作訓練を受けたこともなく、実物をこの日、初めて操作した」「もんじゅは、出力を下げるために制御棒を最下部まで挿入する際、残り6ミリ・メートルからはボタンを小刻みに押し、慎重に下ろす手順を定めている。ところが、操作ミスのあった微調整棒は、残り3ミリ・メートルになると挿入速度が他の制御棒の4分の1に落ちる。したがって、運転員はふつう、ボタンを余計に押し続けて挿入を完了する」「そのような操作方法が手順書に明記されていなかったため、微調整棒に異常が起きたと考え、挿入作業を中止したという」