第229回「『中国で新卒争奪戦』刺激的だが大勢ではない」 (2010/11/21)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 朝日新聞の《中国で新卒争奪戦 日本企業、「負けず嫌い」求める》がブログなどで話題になっています。「日本の企業が、本格的に中国で大学新卒者の確保に動き出した。年630万人という世界最大の市場に狙いを定め、日本本社の幹部要員として採用する」という話ですから、就職難に喘いでいる日本の大学生を刺激します。「リクルートによると、3〜6日、北京と上海で開いた面接会に参加した大学は39校。北京大や清華大、上海の復旦大など中国のトップ校を中心に約1万人の学生が集まり、その中から適性テストや面接を通過した大学4年生計1千人が面接に臨んだ」そうですから、「贅沢なご馳走」を用意された企業の採用担当者が喜んだのも無理からぬところ。

 中国での本質的な人余りぶりは、昨年の第171回「世界不況を契機に経済成長神話見直そう」で大紀元時報の報道「2008年中国国内失業者数、2.5億人に達する恐れ」を紹介しました。「政府は毎年2400万人の雇用機会を創出しなければならないと計画しているが、しかし人材需要に関しては、毎年8%から9%の経済成長率を持続していくには現有の労働力の上、1200万人の新たな労働力があれば十分だという試算がある」。中規模国の産業社会をそっくり毎年、新たに造りだしていくような異常な目標を掲げなければならないのですから、人は余ります。

 一方で、ニューズウィークが先日「中国エリートは欧米を目指さない」と題した、名門・清華大でのインタビューをもとにしたレポートを出しました。「欧米、特にアメリカは、かつて世界で最も上昇志向の強い人々の最終目標だった。だが今は、世界のエリートにとっての通過点でしかない。本気でビジネスに取り組み、富の創造を始める前に、学位を取って履歴書に箔を付けるための場所だ」「彼らにとっては、新興諸国こそリッチで有名になるための舞台だ。今後数十年の世界経済の成長の大部分は新興諸国が担うだろう」

 そこで先週の第228回「若者が目指す国、捨てる国〜世界総覧を作成」では割愛した高学歴層の移住希望動向に目を向けましょう。ギャラップの調査から拾い直すと、中国は若者での移住希望指標はマイナス10%でしたが、4年制大卒以上の高学歴層ではマイナス18%と、さらに多くの人が祖国を離れたがっています。香港の指標は若者マイナス5%に対し高学歴層マイナス28%と一段と顕著です。

 産経ニュースの《【石平のChina Watch】始まった「中国からの大逃亡」 エリートばかり6万5千人》が「2009年に中国から米国への移民だけでその人数は6万5千人に上り、しかもその大半は、エリートや富裕層であるという。彼らの移民先は主に、米国を筆頭にカナダやオーストラリア、シンガポールなどの諸先進国である」と伝えています。

 これからのし上がろうとする若手は新興国に、財をなしたグループは先進国に目が向いている状況です。日本の採用活動はささやかなエピソードでしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー

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