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第423回「行き詰まる福島事故原発建屋の遮水壁での隔離」 (2014/04/19)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 福島事故で溶融した核燃料の炉心を抱えている原発建屋を周辺から隔離し、水の出入りを断つ重要ステップが行き詰まろうとしています。ぐるり取り巻く遮水壁に計画の「凍土壁」へ原子力規制委が強い疑問を投げました。海側の遮水壁は通常の鋼管矢板打設方式ですが、地下に色々と埋まっている陸側では無理があり、苦肉の策としてマイナス30度の冷却液を埋設管で循環させ凍土で壁を造る方式が政府・東電に採用されました。大規模な土木工事で短期間なら凍土化実績がある方式ながら、福島原発事故では数十年にわたって地下の壁として固定される、言わば永久使用です。壁として凍らせ続けるのに年間で何十億円もの電気代がかかり、矢板のような強度・耐久性が保証されるものでないとなれば議論にならざるを得ません。


 日経BPケンプラッツが《前代未聞「凍土遮水壁」の成算》で詳細に特集しているので、そこから福島原発での見取り図を引用しました。海側は埋め立ててオレンジ色の鋼管矢板で囲うのですが、陸側遮水壁に問題ありです。「四つの原子炉建屋周辺を延長約1500m、深さ約30m、厚さ1〜2mの凍土壁でぐるりと取り囲み、建屋内への地下水の流入を抑制する」計画で6月に着工しようとしていました。

 時事通信の《「凍土壁」に疑問続出=安全性の証明要求−規制委》が検討会での議論をこう伝えました。

 《座長役の更田豊志委員はエネ庁の安全対策の検討状況を聞き、「えいやっと決めた部分がかなりある。これだけで安全上の判断はできない」と批判した。エネ庁側は「超一級の専門家に作ってもらった」などと反論。更田委員が「根拠を示してください」と語気を強める場面もあった》《検討会メンバーで首都大学東京の橘高義典教授は「壁が水圧を受ける。地盤の安定性が心配だ」と懸念を示した。京都大の林康裕教授も「検討が十分でないところも、見込みみたいなところもあるようだ」と述べた》

 原子力規制委は着工を認可しない構えです。《規制委、「凍土遮水壁」に懸念 政府・東電推進も「安全性、有効性は未確認」》は《「日本陸水学会」(会長、熊谷道夫・立命館大教授)が昨年末、「凍土壁では放射性物質を長時間完全に封じ込めることができないだけでなく、より大きな事故を起こす可能性が高い」とする文書を内閣府原子力災害対策本部に提出していたことが判明。熊谷会長は取材に対し「総会で決めたことで、学会の総意だ」と話した》とも伝えており、異論は学界に広がっています。

 見取り図奥にある地下水バイパスは海洋放出へ地下水汲み上げが始められた井戸です。第379回「原発後背地のタンク漏洩続出で収拾計画に困難」第382回「無管理同然、汚染水漏れ疑惑タンクが一気に拡大」で示しているように、その背後に汚染水タンク群がびっしりと立ち並んでいて、度重なるタンク操作ミス・漏洩で汚染レベルが上がり、混乱し始めています。

 陸側遮水壁施工にはもうひとつ重要な問題が隠れています。遮水壁が完成すると地下水の流入が止みますから、原子炉やタービン建屋地下の高放射能汚染水よりも周辺の地下水位が下がります。毎日400トンの汚染水発生が無くなるのは結構ですが、高汚染水が建屋外部に出るのは避けられないでしょう。遮水壁がきちんと遮断してくれないと高放射能汚染の海洋を含めた広域拡大に直結します。凍土壁は冷却液をつくる凍結プラントがもしも停電になったら機能を失います。テロ攻撃や航空機墜落といった異常事態にも弱いと言わざるを得ません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

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