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第424回「福島原発廃炉は実現不能まで含めた見直しが必要」 (2014/05/01)

(「BM時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 NHKスペシャル「シリーズ廃炉への道」放映など福島原発事故の後始末が動き出すと伝えられます。始末をつける前提なのに、実は廃炉不能の可能性大です。起きる事態を予め網羅せず突っ走る愚は避けねばなりません。事故当事者の東電にすれば廃炉の工程を粛々と進めるしか考え付かない事情は分かります。しかし、炉心溶融はしても原子炉圧力容器の中で済んだ米スリーマイル島原発とは違い、格納容器に広く溶融燃料が分散してしまった福島で燃料回収処理が完了すると楽観する研究者が多いとは思えません。溶融燃料が格納容器を突き抜けている可能性すらあります。国が廃炉庁のような組織を設けて、二段構え、三段構えで想定廃炉工程が無理と判明したら方向転換する局面に備えるべきです。


 東電が4月に公表した「中長期ロードマップ進捗状況(概要版)」から1号機の状況を切り出し、引用しました。スリーマイル島原発は加圧水型でしたから制御棒は炉心上部から挿入でした。福島原発は沸騰水型のため炉心上部が使えず制御棒は圧力容器の底に穴を開けて通していました。炉心溶融が起きるとこの穴が脆くも貫通して溶融燃料(燃料デブリ)が格納容器の底に落ち、図では中央に固まって描かれていますが、どろどろになって広がったと考えられます。

 溶融燃料は現在でも崩壊熱を出し続けているために所在不明のまま注水して冷やしています。一方で1〜3号機建屋の地下から1日400トンの地下水が浸入、汚染水を増やしています。東電の廃炉計画はこの地下水を遮断する作業も重要なステップになっています。しかし、第423回「行き詰まる福島事故原発建屋の遮水壁での隔離」で紹介したように、この段階から疑義が出ています。

 計画通りならば遮水壁として半世紀も強固に維持されなければならないのに、年間数十億円もの電気代を投じて造るマイナス30度凍土による遮水壁には長期実績がありません。来月にも着工としていたのに、原子力規制委は着工を認可しない構えです。

 朝日新聞の《(耕論)廃炉の現実 山名元さん、佐藤暁さん、竜田一人さん》は「1〜3号機の原子炉内で溶けた燃料(燃料デブリ)も、6〜7年以内に取り出し始める計画です。工程表には廃炉を達成できる根拠が示されていない、という批判もあります。しかし私は技術屋として、それぐらいの時間があれば必ずできると信じています」と述べる楽観的な体制派研究者・山名元氏から始まります。しかし、詳しく聞くほどにボロが出る展開です。

 元原子炉メーカー技術者・佐藤暁氏は進められている冠水方式について「格納容器の鋼板は薄く溶接だらけで、腐食も心配です。原子炉建屋5階の高さまで水を蓄え続けるには強度が乏しく、この選択肢は早く捨てたほうがいい。冠水に成功したとしても、溶けた燃料を取り出す前に多くの炉内構造物を取り除かねばなりません」と、NHKスペシャルの冠水工程ありきに最初から疑問符です。NHKスペシャル出演の米国側経験者も日本の廃炉は非常に困難と言っています。

 「3.11」の翌日に書いた第244回「福島第一原発は既に大きく壊れている可能性」にある「原発正門付近での放射線量推移グラフ」を見ていただけば歴然です。1号機が水素爆発を起こす前の段階で放射性物質が大量に漏れていた証拠であり、冠水させようとしている格納容器は炉心溶融の熱と圧力でぼろぼろになっているはずです。東電の考えている単純路線で突っ走って代替の手段や方策なしでは大きな禍根になるでしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

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