第448回「死に体の核燃料再処理、政府の救済人事も無理か」
青森県六ケ所村の核燃料再処理工場が長期の完工延期に追い込まれそうです。原子力規制委による新規制基準に適合が困難なためで、政府が規制委員に推進派の元原子力学会長を送り込んでも無理を通すことは出来ません。工場の原型である原研機構・東海再処理施設が新規制基準適合には1000億円以上掛かるとして廃止を決めているのに、六ケ所再処理工場は大規模な改修なしで適合審査に臨んでいます。日本原燃は2016年春ごろまで完工を延ばすつもりと言われますが、審査により工場設備の改造が必要になるのは確実ですから設備設計・認可・施工がそんなに短期間で済むはずがありません。核燃料サイクルの中核施設はいつまで経っても完成しそうもなく、やはり稼働が絶望的な高速増殖炉「もんじゅ」と共に核燃サイクル撤退を真剣に考えるべきです。
再処理工場はもともと1997年完工予定だったのに、これまでに20回の完工延期を繰り返してきました。純粋な民間企業ならあり得ない失態ですが、国策会社として許されてきました。福島原発事故による原子力規制強化にもこれまでのような甘えで対処した実態が《原燃再処理完工「新工程を検討」》に出ています。《原燃は再処理工場の完工に向け、1月7日に規制委に適合性審査を申請。審査期間を6カ月、使用前検査などに4カ月かかると見込み、10月完工を設定した。ただ、規制委から申請書の不備を指摘されるなど審査対応に手間取り、審査は現在も続いている。重大事故対策について補正申請が必要となっているほか、地震対策の審査でも複数論点を積み残している》
適合審査の現状は《再処理施設 前回までの審査会合における主な論点と対応について》にまとめられています。重大事故についての項目が多数あるのにほとんど対応できていない点が目につきます。規制委が出した疑問に全く答えられず、どんな重大事故を考えるべきなのか、その第一歩から出来ていません。実際には各種重大事故を具体的に想定して現有設備で足りなければ改造なり追加なりしなければならないのに、そこまで進んでいません。「申請書の不備を指摘」といった生易しい審査状況ではないのです。審査開始直後のやり取りを書いた第407回「核燃料再処理工場の不合格確定、核燃サイクル崩壊」の延長上で進行しています。
核燃料サイクル推進の研究者である元原子力学会長の田中知氏が9月から審査担当の規制委員になりました。政府が委員に押し込んだのは、自分の専門分野を駄目と言うはずもないからでしょうが、審査状況はちょっと色を付けて規制強化したと誤魔化せるような段階から遥かに進んだと見ます。ただ、前任の更田豊志委員が厳しく踏み込んだ論点をぼかしていかないか、注視する必要があります。こんな利益相反人事をマスメディアが厳しく批判しないのも驚きです。
この「救済」人事に加えて政府は日本原燃に国の関与を強める方策を考え始めました。北海道新聞が社説《核燃料サイクル 延命より撤退の議論を》で「本来、撤退を含め抜本的に見直すのが筋だが、政府の後ろ盾で存続させるというのである。事実上破綻した事業を国民負担で維持するような案は、断じて認められない」と批判しました。
「もんじゅ」については第353回「高速炉もんじゅ稼働を絶望にする安全設備要求」で規制対策は不可能であると指摘しましたし、核爆発を起こす恐ろしい「炉心崩壊事故」があり得ます。技術的に行き詰まっている核燃料サイクルを政府が引っ張り続けるのは、撤退となったら大量に貯まっているプルトニウムや使用済み核燃料の処分などの難題に手を付けねばならないからです。官僚任せにして進むはずもなく、政治的な決断をすべき時が迫っています。
再処理工場はもともと1997年完工予定だったのに、これまでに20回の完工延期を繰り返してきました。純粋な民間企業ならあり得ない失態ですが、国策会社として許されてきました。福島原発事故による原子力規制強化にもこれまでのような甘えで対処した実態が《原燃再処理完工「新工程を検討」》に出ています。《原燃は再処理工場の完工に向け、1月7日に規制委に適合性審査を申請。審査期間を6カ月、使用前検査などに4カ月かかると見込み、10月完工を設定した。ただ、規制委から申請書の不備を指摘されるなど審査対応に手間取り、審査は現在も続いている。重大事故対策について補正申請が必要となっているほか、地震対策の審査でも複数論点を積み残している》
適合審査の現状は《再処理施設 前回までの審査会合における主な論点と対応について》にまとめられています。重大事故についての項目が多数あるのにほとんど対応できていない点が目につきます。規制委が出した疑問に全く答えられず、どんな重大事故を考えるべきなのか、その第一歩から出来ていません。実際には各種重大事故を具体的に想定して現有設備で足りなければ改造なり追加なりしなければならないのに、そこまで進んでいません。「申請書の不備を指摘」といった生易しい審査状況ではないのです。審査開始直後のやり取りを書いた第407回「核燃料再処理工場の不合格確定、核燃サイクル崩壊」の延長上で進行しています。
核燃料サイクル推進の研究者である元原子力学会長の田中知氏が9月から審査担当の規制委員になりました。政府が委員に押し込んだのは、自分の専門分野を駄目と言うはずもないからでしょうが、審査状況はちょっと色を付けて規制強化したと誤魔化せるような段階から遥かに進んだと見ます。ただ、前任の更田豊志委員が厳しく踏み込んだ論点をぼかしていかないか、注視する必要があります。こんな利益相反人事をマスメディアが厳しく批判しないのも驚きです。
この「救済」人事に加えて政府は日本原燃に国の関与を強める方策を考え始めました。北海道新聞が社説《核燃料サイクル 延命より撤退の議論を》で「本来、撤退を含め抜本的に見直すのが筋だが、政府の後ろ盾で存続させるというのである。事実上破綻した事業を国民負担で維持するような案は、断じて認められない」と批判しました。
「もんじゅ」については第353回「高速炉もんじゅ稼働を絶望にする安全設備要求」で規制対策は不可能であると指摘しましたし、核爆発を起こす恐ろしい「炉心崩壊事故」があり得ます。技術的に行き詰まっている核燃料サイクルを政府が引っ張り続けるのは、撤退となったら大量に貯まっているプルトニウムや使用済み核燃料の処分などの難題に手を付けねばならないからです。官僚任せにして進むはずもなく、政治的な決断をすべき時が迫っています。