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第456回「中央情報癒着を無視して朝日新聞の再生は無い」 (2014/12/07)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 誤報問題で揺れる朝日新聞が社長以下の役員人事を一新しました。本当に再生できるのか、それは表面的な誤報問題ではなく、朝日に限らぬ中央官庁からのリークを情報源にしてきた情報癒着体質打破であると指摘します。最初にお断りして置かねばなりませんが、私は朝日新聞記者OBです。しかし、事情があって退社するまでの13年間はネット上の評論活動に半身を移して過ごし、朝日を含めた日本のマスメディアに厳しい批判を繰り返してきました。誤報を自浄できないのは中央官庁に依存すれば記事が書ける在京マスメディアの安易な体質に端を発しています。自己検証しないで記事を流す習慣を悪と感じないどころか、霞ヶ関が情報源と鼻高々なのです。東日本大震災と福島原発事故で中央官庁がいかに無力か明白になったのに、在京マスメディアはそろって「大本営発表報道」に先祖返りし、情報を自分で検証する能力の無さを天下に晒して恥じるところがありませんでした。第282回「原発震災報道でマスメディア側の検証は拙劣」で具体的に書いています。

 MSNニュースの《【朝日社長会見】「慰安婦」影響の是正は語らず…新社長「提言待って」と繰り返すのみ 部数は20万部減》は新社長の会見発言をこう伝えました。《一方、渡辺社長は、大阪社会部で事件報道などに携わり、西日本を中心に地方の現場を長く取材した点をアピール。この記者時代に関する質問には明るい表情に変わり、「私のキャリアを朝日の改革に生かす」「誤報は人間がやることだから可能性はある。社内で『おかしいんじゃないの』と言える空気が重要だ」などと語った》

 朝日の社内で昔から東京と大阪の編集局の体質差を伝えて「東京の傲慢、大阪の野党」と言われます。朝日の社長は東京の政治部と経済部の部長経験者が担ってきました。霞ヶ関の権力取材の中心セクションです。社会部出身者は稀でした。こうした在京マスメディア体質が「傲慢」を生み、一方、権力から遠い大阪編集局は野党精神を発揮した取材に徹してきました。東京編集局長を経験したことがない新社長の発言はこういう事情の上にあると解したら良いでしょう。

 しかし、新社長がどこまで考えているのかは知りません。弁護士ドットコムの《朝日新聞・渡辺新社長「誤報を前提とした対策が必要」具体的な防止策はこれから》は《渡辺社長は同日夕、大阪市内で記者会見を開き、「これまでの手法や意識を根本的に見直す改革が不可欠」「根底から作りかえる」と改革方針を表明した。しかし具体的な誤報防止対策については、「誤報が起きる前提で対策を取る必要がある」と述べるにとどまった》と報じています。

 さらに《渡辺社長は、改革方針の一つとして、言論の「広場」機能の強化をあげ、「双方向性を強く意識して、読者と議論を深めていく」と説明した。その点について、「双方向ということで、インターネットを積極的に活用していく考えはあるか?」という質問も投げかけられた。それに対して、渡辺社長は「どういう形がいいのか、いま見えているわけではない」としつつ、「(ウェブサイトである)朝日新聞デジタルの機能や新聞の投稿欄をうまく活用しながら、双方向的な仕組みを考えていきたい」と語った》とあります。

 2005年に新聞社の品質管理に当たる紙面審査メールで日々、ブログから発信されるニュース評価を集めたのが私ですし、同じ時期、大阪で読者とのネット連携を進めようとして東京本社に潰されたのも私です。読者、世間の声を聞く必要を本心からは感じていない「東京の傲慢」では駄目であることは遠い昔、1988年のマスメディア初のパソコン通信「サイエンスネット」で早くも明らかになっていました。第25回「インターネット検索とこのコラム」で取り上げています。ネットを本当に使えるか、鍵はそこにあります。

 誤報が起きるものである点に異論はありません。誤報を恐れて報道の仕事はできません。しかし、福島原発の吉田調書誤報問題で言えば、あれだけ膨大な内容を特報チームだけで理解できると考える方が不遜であり、特ダネ意識で調書を社内にも見せなかったのは異常です。『吉田調書など証言、批判派学者に見せてこそ価値』で書いているように少数記者の一知半解で勝負は困ります。

 霞ヶ関に限らぬオルタナティブな情報源を多数の専門家の間に常に確保して、情報価値を相対化できる回路を持たねばなりません。福島原発事故発生で朝日の記者が東京本社の前にある国立がん研究センターに飛び込んで、非常に偏った専門家の放射線被ばく影響評価を聞いて放射線に甘い記事を出した惨事がありました。これなどは誤報と断じて良いケースだと考えます。聞いた情報をそのままでは記事にできない記者常識を持っていれば防げたケースです。専門家見解にも実は色々あって、新聞社として伝えられる線はどこか取材網をあげて調べなければならなかったのです。

 東京を中心にした愚かな権威主義は朝日だけでなく読売新聞にも広がっています。関係者から聞くところでは東京編集局から出稿した記事の多くは、大阪編集局が紙面化する際には手を加えるのを禁じられているそうです。中身に関心を持ってくれる社内関係者が増えるほど新聞発行以前にチェックできる可能性が高まりますが、読売東京は迷惑とお考えのようです。

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