STAP小保方ファンタジーに実験ノートの罪は大 [BM時評]

 STAP細胞問題で理研調査委がネイチャー論文を全面否定する結論を出しました。基になったデータに「小保方元研究員のものがほとんど存在せず」とは、こうあったらとのファンタジーが科学論文になったと示します。実験ノートがポエムと言われるなど実質的に存在しなかった点について「実験ノートがないことはねつ造でも改ざんでもないが、研究者の責任ある行為ではない」との甘い指摘ですが、膨大なデータが発生する実証実験が統制できるはずがなく、架空論文に直結したと考えるべきです。

 NHKの《理研「STAP細胞はES細胞の混入」》はこう伝えました。《STAP細胞の証拠とされた緑に光るマウスやテラトーマと呼ばれる細胞組織などはES細胞が混入した可能性が高いとし、小保方元研究員らが主張してきたSTAP細胞の作製の成功という論文の内容を否定しました》《さらに、小保方元研究員が新たに2つのねつ造を行ったと認定し、論文の多くの図や表のオリジナルデータについて特に小保方元研究員のものが一部を除きほとんど存在せず、本当に行われたのか証拠がない実験もいくつか存在することも明らかにしました》

 6月に第432回「STAP細胞疑惑=小保方ファンタジーの闇を推理する」で主張した「発見全体が小保方氏の脳内妄想による虚構だった疑い」が現実のものになったと言わざるを得ません。

 毎日新聞の《STAP論文:「ほぼすべて否定」理研調査委が結論付け》はこう報じています。《新たに小保方氏による捏造と認定されたのは、主論文中の細胞の増殖率を比較するグラフと、遺伝子の働き方が変わる現象を示す図。さらに小保方氏が担当した実験では基になるデータがほとんど存在せず、「研究の基盤が崩壊している」と指摘した。不正認定された図表は「氷山の一角」に過ぎないとした。調査委によると、小保方氏は1点の捏造について「(共著者に)もとのデータでは使えないと言われ、操作した」との趣旨の発言をしたという》

 共同研究者の過大な期待に応えてデータを捏造したわけです。ES細胞混入については小保方氏は「自分でない」と否定していると伝えられますが、きちんとした実験ノートがあって実験データと結びついていれば、どこで混入したかはトレースできたはずです。第432回「STAP細胞疑惑=小保方ファンタジーの闇を推理する」で《「ハーバードで敏腕」と伝え聞いただけで「実験ノートを見せろ」と言えなくなる国内有数の研究者たち》《実験による実証科学の作法を知らない初心者の発想が、輸入学問の伝統で崇められてしまった日本的悲劇》と断じた通りでした。

 ネットにSTAP疑惑をすっぱ抜かれたマスメディア側の杜撰さは第458回「STAP『根無し草』報道の始末は付いていない」で論じています。