閣議決定の少子化社会対策大綱は甚だしい見当違い [BM時評]

 20日に閣議決定の少子化社会対策大綱。初めて結婚の問題まで踏み込んだそうですが、若者に一方的に自立、結婚、出産を説教しているだけです。非正規の就職が半分にもなる現状を頬かむりした甚だしい見当違いです。第384回「結婚も離婚後も危うい非正規雇用の給与格差」で紹介した年収の落差《正規職男性520万円、非正規職男性225万円》を直視しないで少子化対策を論じても無意味です。

 内閣府の「少子化社会対策大綱(案)」には『若者の自立が難しくなっている状況を変えていく。』とあって、こうです。《若者が、自己実現や社会への参画を目指しながら、自己の選択として、職業や結婚、出産、子育てを自らの人生において積極的に位置付けていくことは、自立した社会人となる上で非常に大切なことである。しかし、近年それを阻む要因として、若年失業者やいわゆるフリーターの増大など、若者が社会的に自立することが難しい社会経済状況がある》

 だから《早い頃からの職業意識の醸成のための教育や、教育と雇用との間で連携の取れたキャリア形成を支援することなどにより、若年失業の流れを転換してゆくことが求められている》とするのですが、ちゃんと就職しても非正規では結婚するに足る収入が得られない現実を伏せています。まるで若者の自覚の無さが少子化問題の核心であるかのようです。雇用の流動化を進めて、働く者に更に不利な状況を作りつつある安倍政権らしい少子化対策と申し上げます。

 これでは第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」 で国勢調査を使って予測した、現在30代以下の若者世代で生涯未婚率が跳ね上がっていく恐るべき未来に全く無力でしょう。育児休業を取得しやすい環境づくり「イクメン奨励」など育児問題の改善は意味はありますが、結婚できる状況になって初めて効いてくる施策です。大企業で大幅賃上げのニュースが流れて沸いていますが、非正規職にはあまり恩恵はないでしょう。

 報道するマスメディアに政府施策を批判できる視点が無い点は、いつものことながら残念です。