第474回「先進国で稀な人口減少と高齢化をグラフで見る」

 海外から移民を受け入れもしないし非婚・少子化対策に本腰を入れるでもない――先進国で稀な我が国の人口減少と高齢化の進行をグラフにすると、政府は無能で、そもそものやる気が無いと思われてなりません。政治家は言わずもがな、中央省庁の官僚たちも右肩上がりの時代の政策運営しか経験がないので、右下がりに転じて膨張を続けた財政など政策の始末をつける必要が生まれたのに呆然と見送っている感があります。

 ダイヤモンド・オンラインの《未曽有の人口減少がもたらす経済、年金、財政、インフラの「Xデー」(上)》には以前から気になっていた論点がたくさん含まれて参考になりました。例えば第461回「IMFは『失われた30年』認定、首相の強気は虚構」では2020年まで名目GDP推移が横ばいを続けるのが、国際的な日本経済の評価です。その後はどうなるかです。

 《どの程度の成長率になるのかというと、現在の実質1.0〜1.5%の成長率が、これから年々低下して、2020年過ぎにはマイナスとなり、その後は▲0.5〜▲1.0%のマイナス成長が続くであろうと思われます。その場合、先進国でマイナス成長となるのは日本だけです。つまり世界経済のなかで、日本経済だけが縮小します。労働者の減り方があまりにも大きいため、技術の進歩をもってしてもカバーし切れないということです》  先進7カ国の人口推移を2000年から10年毎に2050年まで並べたグラフです(総務省統計局「世界の統計2015」から)。人口が減るのは日本以外ではドイツだけで、他の先進国は増え続けます。移民受け入れはするし、社会保障が手厚いから出生率が日本より高いのです。減少のドイツは50年間かけて1100万人減るくらいの緩いペースです。日本は2010年からの40年間だけで3100万人も減らす急激な人口減です。しかも、次の年齢別3区分の推移グラフを見てください。  15〜64歳の生産年齢人口がまさに釣瓶落としに減ります。2010年の8173万人が2050年には5001万人にもなってしまいます。これは国立社会保障・人口問題研究所による将来推計です。働き手が39%も消えてしまえば、政府が言う「働く女性を増やす」方向への誘導など焼け石に水です。

 さらに2022年頃には生産年齢人口の2人で65歳以上の高齢者1人を支えなければならなくなります。2050年には1.33人で1人を支える状態まで突き進みます。年金の負担を考えると非常に厳しい事態です。他の先進国では2人強で1人を支えるところまでしか進みません。

 3月の『閣議決定の少子化社会対策大綱は甚だしい見当違い』で指摘したように、若い世代では半分を占め始めた非正規で就職の男性は結婚できる年収に届きません。これではますます結婚しなくなるばかりです。打つべき手を打たずに徒手空拳のまま――これが現在の日本政府であると申し上げましょう。

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