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第539回「役場集落等だけ再生?福島の『復興像』に疑問」 (2016/09/11)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 福島原発事故で放射能汚染された市町村復興に疑問符を打たざるを得ない動きが続いています。帰還困難区域の一部に拠点を設けて2022年をめどに敢えて帰還させる政府方針であり、モデル地区で森林除染する決定です。原発周辺の双葉町や大熊町などはほぼ全域が重度の汚染下にあり、事故後6年を経過しても年間線量が20ミリシーベルトまで下がらない帰還困難区域が広がっています。その中で役場周辺集落などを重点的に除染して住民帰還させ、町復興のシンボルにする政策意図です。しかしこれでは、チェルノブイリ事故での住民の移住基準であり、放射線障害防止法で定める放射線管理区域の設定基準でもある年間5ミリシーベルトを超える地域に役場集落がぽつんと存在することになります。

 朝日新聞の《帰還困難区域、22年めどに一部解除 役場周辺など限定》はこう伝えていますが、同じ町内で帰れる住民と帰れない住民の分断だけを問題としています。

 《政府は31日、東京電力福島第一原発の事故で放射線量が高くなった帰還困難区域(約2万4千人)の一部について、2022年をめどに避難指示を解除する方針を発表した。対象は役場周辺などに限定し、来年度から放射性物質の除染などを本格的に始める》《方針では、事故から5年以上たち、除染をしていなくても「区域の線量は低下している」と説明。放置したままだと風評被害が続き、福島の復興が遅れる懸念も示した。解除の対象は役場や駅、公民館の近くなど、もともと住宅が多く、帰還しやすい場所。法律で復興拠点として認定する》


 上図は《放射線量等分布マップ拡大サイト》に掲げられている昨年11月時点での地表1メートル空間線量率マップから引用です。年間20ミリシーベルトは3.8マイクロシーベルト/時に相当しますから、黄色以上の地域でまだ大きな広がりがあります。年間5ミリシーベルト相当の放射線管理区域では、福島以外なら法律によって飲食禁止であり、寝泊まりなど論外です。年間5ミリシーベルトはマップでは1マイクロシーベルト/時の濃いグリーン以上で、今なお広範囲であると知れます。放射線障害防止法が決めている公衆の被ばく限度年間1ミリシーベルト以下を満たすのは濃い青とやや濃い青の地域で、かなり原発から離れなければなりません。

 ただし《1年の間、屋外に毎日8時間、屋内に毎日16時間いると仮定した場合、木造の建屋の遮蔽係数0.4を考慮して約20ミリシーベルトになるような空間線量率は毎時3.8マイクロシーベルト(自然放射線による影響も含む。)である》と説明があるように、家屋による遮蔽が加味されて甘くなっています。2012年の『20mSvで居住可の無茶を何年も続けて良いのか』でも指摘したように、年間5ミリシーベルトを超えるような地域に「お帰りください」と勧めることは本来は法治国家として出来ないはずです。子どもを持つ家庭なら帰らないでしょう。

 また、現状でも除染作業で生じた汚染物質の貯蔵施設や処分場が決まらず、大量に野積みされているのに森林除染まで手を付けるとは愚かすぎます。NHKの《政府 森林除染のモデル地区4か所決定 秋から除染へ》は《森林の除染について、政府は、原則として住民の生活圏から20メートルの範囲などに限って行う方針でしたが、福島県などから除染地域の拡大を求める声が相次いだことから、避難指示区域とその周辺で10か所程度をモデル地区として選んで除染を行うことになりました》と報じています。

 除染の費用は政府が立替て東電に請求する建前であり、いくらでも膨らませられるかのようですが、第536回「東電資金破綻の現実を認めぬ政府と既成メディア」で明かしたように収入が電気料金しかなくなった東電に支払い能力はありません。いずれは国民負担にならざるを得ない先行きは見えており、広げたらきりがない除染にどこまでお金を掛けるのか、負担に耐えられるのか議論してから始めるべきです。相次いでいる格好を付けるばかりの「復興像」は本質的なところで間違っていると言えます。

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