第574回「中国からではなく韓国のPM2.5大気汚染は国内発」

 今週半ばに続いて20日夕から韓国ソウル首都圏がPM2.5大気汚染の猛威にさらされています。今回の注目は中国大気汚染の影響でなく、韓国国内に汚染源があると見られ始めた点ですが、体系的な調査研究がありません。午後9時過ぎには大気のAQI指数が「287」など極めて健康に良くない状況になり、全ての人が屋外活動を中止すべき「300」の手前に至っています。ソウル市は超微細粉塵注意報を出し、スケートリンクの運営を停止しました。中国ばかりでなく韓国への観光も大気汚染から考えものになって来ました。  聯合ニュースによると、ソウル市の25区で午後6時に平均PM2.5濃度が116マイクログラム/立方メートルを記録しました。午後8時過ぎの段階で中国から韓国、日本にかけてのAQI指数マップを上に取り出しました。この時の風向きは黄海を北風が吹き、北京に近い渤海湾では東の風でした。中国・河北省などは「500」など重度の汚染状況にあるものの、風向きから韓国に影響するはずがありません。

 16日から18日の大気汚染についてハンギョレ新聞の19日付《韓国の高濃度PM2.5は当然中国発?今回は違った》はこう伝えました。

 《環境科学院関係者は、首都圏の今回の高濃度PM2.5に及ぼした国内外要因の寄与率と関連して「短期間分析データを具体的に公開する訳には行かないが、16日から18日までの3日間、国外影響が優勢だった日は一日もなかった。15日は国外影響が優勢だったが、16日と17日は大気の停滞で国内影響が優勢だったし、18日は黄砂の流入もあったが首都圏では国内と国外影響が同等水準だったと分析された」と話した》

 2016年の政府資料で「PM2.5高濃度時には60〜80%が国外影響」とされ、これが独り歩きしてきました。しかし、裏付けになる体系的な研究が存在せず、重篤スモッグが深刻な隣国中国に対して強く出られない要因になっていました。

 15日には朝鮮日報が《韓国環境部のPM2.5測定はデタラメ》を掲載しています。

 《昨年11月から12月にかけて全国10カ所の測定所近くで、移動測定車を使って地上から高さ2メートルの位置を測定した結果、粒子状物質濃度は各測定所の濃度よりも最大で28.1%高かったという》

 《環境部の「大気汚染測定網設置・運営指針」によると、測定所の測定器は主に人が呼吸する高さである地上1.5−10メートルの位置に設置することになっているが、やむを得ない場合でも高さ20メートルを超えないよう規定されている。ところが、2016年末現在で全国の測定所264カ所のうち198カ所(75%)で高さ10−20メートル、20カ所(7.6%)で20−30メートルに測定器が設置されている》

 2016年に第529回「韓国のPM2.5測定対応に疑問あり、杜撰で過小では」を書いて警鐘を鳴らしました。健康に影響が大きいPM2.5など微粒子物質についてもズサンな扱いは見えていました。セウォル号沈没事故や地下鉄追突事故を分析した第477回「安全になれぬ韓国、手抜き勝手の国民意識が原因」で「一般の国民が法律の内容を独自に評価し、従うかどうか勝手に決めている感が強いのです」と指摘しました。公務員までも勝手なことをしているのが実情のようです。