第620回「世界蔓延の厄介害虫が茨城へ到達、全国拡散か」

 世界各地の農業に甚大な被害を与えているガ、ツマジロクサヨトウが7月の鹿児島侵入後、8月半ばに茨城県水戸市まで到達しました。1日で百キロ、2百キロ飛翔する能力があり、全国に拡散した恐れが強まっています。6月に台湾に侵入しており、沖縄や鹿児島の島部で見つかっている点から台湾から島伝いにやってきた可能性が高いと見られます。台湾はほぼ全島で見つかり防除に躍起になっています。完全防除しても中国本土から第二、第三の波がやって来る恐れが大ですから、台湾から日本まで今後はイタチごっこが続く可能性があります。  7月に書いた第614回「早くも日本侵入、駆除至難害虫に殺虫剤が無い」で掲げた白地図に手を入れました。今年1月にミャンマーから中国雲南省に侵入した後、2000キロを5カ月かけて繁殖拡散して台湾に至り、島伝いに1100キロを1カ月で鹿児島、さらに1月半で茨城までですから驚くべき拡散スピードです。世代サイクルが1カ月程度と短く、成虫のメスは卵千個から2千個を生む繁殖力の強さが脅威です。

 これまでに福岡を除く九州・沖縄の7県で見つかっています。20日付の共同通信《害虫ガ、茨城と高知で確認 九州・沖縄以外に拡大》はこう伝えました。

 《高知県によると、雄花や葉が食い荒らされた同県大月町のスイートコーン畑で9日に幼虫を発見。茨城県によると、14日には水戸市の飼料用トウモロコシ畑で幼虫5匹が見つかった。農林水産省の植物防疫所で調べた結果、いずれもツマジロクサヨトウと判明した》

 農林水産省に《ツマジロクサヨトウに関する情報》ページがあり、《極めて広食性なヤガ科の害虫であり、サトウキビ、トウモロコシ、イネ、豆類、いも類、野菜類等、80種類以上の作物に被害を与えることが知られています》としています。発見時には直ちに通報が呼びかけられています。

 国内で最初に見つかった鹿児島での発生状況調査によると、トウモロコシ、水稲、サツマイモ、サトウキビなど306ほ場を調べてツマジロクサヨトウを見つけたのは飼料用トウモロコシとスイートコーンの53ほ場でした。その後の各県の発生状況でもトウモロコシだけが狙われているのが不幸中の幸いです。6月の第611回「駆除至難害虫が台湾に到達、日本へは稲作が心配」で紹介しているように、この害虫の原産地、アメリカではトウモロコシの商業生産を続けるために遺伝子組換え技術を活用した特殊な方法が編み出されていますが、稲作には適用できません。

 台湾の発生・駆除状況をネットのニュースで調べると、18日現在で嘉義市を除く全国で見つかり、227件870ヘクタールにのぼって成虫の発見も176件です。完全駆除目前が81件21ヘクタール、薬剤防除中が145件848ヘクタールなどとなっています。

 この害虫はアメリカからアフリカ、アジアと世界中に拡散する過程で様々な農薬が使われた結果、農薬耐性を持ってしまったと考えられています。農林水産省のページでも適宜、作物別に適用農薬の改訂が進められています。熱帯産であるために寒冷地で越冬できない性質だけが弱点です。農林水産省の資料から写真を引用します。