第673回「中国発表通りなら新型コロナ死者は140万人か」

 
 中国政府の疾病予防コントロールセンター(CDC)からゼロコロナ政策放棄後で初めて詳細な検討に値する感染状況説明文書が公開されました。《全国の新型コロナウイルス感染症の流行状況》25日付:中国語です。世界中から「状況説明がまるで不透明」と猛烈な批判を浴びて作成された報告で、各種のグラフを入れた長文です。「死亡者が7万人程度、ピークは過ぎた」というこれまでの説明を補強する形なのですが、詳細に見ていくと重症者数の推移に対して死者推移があまりに小さいのです。重症ピーク12万8千に対して、死者ピークは30分の1の4273人です。恐ろしく常識外れです。昨年の12月9日から今年の1月25日の期間がグラフで示されているので、この時期の日本の重症者治療と同じと仮定したら中国の死亡者は141万人に上りました。これは病院内死亡の数字であり、在宅死亡は含みません。  1日の重症者数は本来は累計をとる数字ではありませんが、1カ月半という長いスパンで死亡者数累計と比べるので治療の質が同じと仮定するなら意味があります。日本は重症病床に余裕がありましたが、新型コロナ本来の呼吸器疾患よりも患者既往疾患悪化での死亡が目立って死者が増えたとされています。この期間での重症累計「27908」に対して、死亡者数は「15235」でした。中国側の重症累計を求めるために1月5日時点で分割し、左の台形Aは台形計算の6割、右の台形Bは台形計算通りとしました。中国の重症累計は「258万」となり、日本並みと仮定すれば死亡者数は「141万」でした。

 中国の重症数と死亡数グラフを並べると、死亡のピークが重症のピークの前にあって呆れます。政府の通達で新型コロナで死亡と医師が書けなくなる一方で上海などの病院は足の踏み場が無いほど患者で溢れたと伝えられました。

 日中ともに同じようなオミクロン株亜種が流行しており、毒性に差はありません。日中の人口差は11倍強です。人口差を考えても10倍近く中国の同期間死者が多いのです。この期間、中国と地続きの香港でも死者が多く発生しています。人口100万人に対して香港は日本の2、3倍の死者を出しています。香港の新型コロナワクチンはファイザー系が半分、効き目が弱い中国産が半分とされます。中国本土では中国産ワクチンの効きの悪さに加えて、ゼロコロナ政策で全く免疫が無かった点が大きく作用したと考えられます。

 中国政府は「ピークは過ぎた」とばかり強調しますが、重症数のグラフを見ても高水準で、とても安心できません。地方は都市部と違って医療体制が脆弱なうえに、健康保険も貧弱で病院にかかるのを避ける傾向があるとされます。出稼ぎの子どもに迷惑をかけまいと薬を飲むだけで済ませる高齢者が多いようです。病院に行かなければ数字に表れません。

 26日付レコードチャイナ《中国の新型コロナ感染はピークを過ぎたのか?―独メディア》がこう伝えています。

 《ロンドンを本拠とする健康データ研究機関エアフィニティが25日に発表した報告の中で、中国で起きている感染の波はすでにピークを迎えており、1日に420万人の感染者が出ている見込みであり、コロナによる死者数も今月26日に1日当たり3万6000人のピークを迎えるとの予測を示したことを紹介。この予測モデルによれば、中国では昨年12月以降ですでに84万8000人がコロナによって死亡しており、中国政府の公式発表よりもはるかに多い》

 《エアフィニティが中国での感染の波について、これまで予測されていた2回の大きな波ではなく、1回の大規模かつ長期的な感染の波が発生している可能性を指摘する》

 春節による延べ21億人の大移動が何をもたらすか、まだ見えません。感染爆発で新たな変異種が発生する恐れも大です。さらには本当のコロナ死者数も死亡統計が発表され、隠れた超過死亡数としてしか見えてこないかもしれません。

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