エネルギー基本計画合意、虚構破綻は見えている [BM時評]

 エネルギー基本計画で自公与党合意、近く閣議決定が伝えられました。福島原発事故の反省に立つと言いつつ、原発ゼロを放棄、核燃サイクルを維持します。従来から守る虚構が目の前で破綻しようとしているのにです。「原子力発電は重要なベースロード電源」だから原発再稼働ですが、立地自治体にカネをばらまく仕組みではもう不可能です。事故時避難計画の対象が30キロ圏135市町村に大幅拡大した今、周辺自治体の同意取り付けは大間原発差し止め提訴の函館市のように困難になりました。核燃サイクルの中核、再処理工場は原子力規制委の新規制基準審査会合で重大事故への備えが欠落していると指摘が続いています。

 NHKの《函館市が大間原発差し止め提訴》は《訴えの中で函館市は「安全性が確保されたとは言えず、事故になれば自治体の機能が失われるほどの大きな被害を受ける」などと主張しています。合わせて「函館市は事故の際に避難などの対象となる半径30キロ圏内に含まれており、函館市が同意するまでは建設をやめるべきだ」と求めています。自治体が原告となって原発の建設差し止めを求める裁判を起こしたのは、全国で初めて》と伝えました。

 昨年末の『原発事故時の避難計画、具体化するほど無理目立つ』で指摘しているように、20万人以上を避難対象にする自治体があるなど、いざ過酷事故発生となって周到で実行可能な避難計画を用意するのが非常に難しくなりました。エネルギー基本計画政府案は「世界で最も厳しい水準の」新規制基準による審査が進んでいると称していますが、それだけでは周辺自治体から同意を取り付けられなくなっています。

 「原子力政策の再構築」と掲げ「もんじゅのトラブル、六ヶ所再処理工場の度重なる計画遅延、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定の遅れ等、原子力政策をめぐる多くのトラブルやスケジュールの遅延が国民の不信を招いてきたことも事実」としているのに、核燃料サイクル政策に実質的には手を付けないで済ませます。

 しかし第407回「核燃料再処理工場の不合格確定、核燃サイクル崩壊」で「新規制基準の適合性審査が始まった青森・六ケ所再処理工場は、早くも不合格が確定したとお伝えすべき惨状になっています」とした通りです。その後の審査でも重大事故への備え欠落が言われ続けて、事業者である日本原燃は重大事故への考え方をまとめ直すことなっています。もんじゅに至っては第353回「高速炉もんじゅ稼働を絶望にする安全設備要求」にある原子力規制委の考え方なら今後、運転は不可能です。