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第469回「韓国のサウジ向け小型原発は韓流ファンタジー」 (2015/03/08)

(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 韓国大統領とサウジ国王の間で小型原発の輸出覚書締結のニュースが流れました。韓国メディアは中小型原発市場を切り開いたと興奮気味です。興味があって調べると、韓流ドラマ「こうであったら」願望の塊に見えます。設計だけでまだ実験炉もない原発をサウジアラビアで20億ドルで2基建設して、試験運用の後で第三国に共同で輸出する夢の様な話です。加圧水型炉の技術を踏襲するものの、主要機器を大口径配管で繋ぐのを止めて原子炉容器内に集約して安全性を高めるという触れ込みです。まずは主要部を図で見てください。


 図中のように略称「スマート(SMART)原子炉」と呼ばれています。蒸気発生器4系統と加圧器も循環ポンプも炉心がある圧力容器に組み込まれています。電気出力は真水化プラントが無ければ10万キロワット、1日4万トンの真水を造るなら9万キロワットに落ちます。発電用蒸気を分けて、熱で海水を蒸発させる古典的な脱塩プラント付きです。(図はIAEAのウェブから)

 一体化すると確かに有利に見えますが、炉心の近くにあるために運転を始めると機器はいずれも中性子を浴びて放射化されます。故障や不具合が発見されても人間による修理や手直しは不可能になります。実験炉で機能や性能を確かめる段階を踏まずに「完璧に動く」実用炉が出来ると考えるとはファンタジーそのものです。おまけにこの炉は60年運転を標榜しています。40年運転が世界の標準である今、韓国単独で膨大な部品や資材のレベルを60年運転に引き上げる力があるとは思えません。

 10万キロワット1基が1200億円程度かかる点も疑問です。100万キロワットの標準的大型原発に比べると数分の1ですが、10万キロワットの石炭火力なら230億円で建設できます。1000億円投じれば100万キロワットの天然ガス火力が出来るのです。また、原子力と無縁だった国が導入すると厄介な核廃棄物や放射線管理など問題が発生します。世界に小型炉需要はいっぱいあるとの主張ですが、小国が導入するにはハードルは高く、10万キロワット石炭火力に脱塩プラントを付けた方がずっとお手軽です。

 実験炉も造らない悪い癖は、韓国の新型炉「APR-1400」が設計図だけでアラブ首長国連邦(UAE)に売れて2基建設中だからでしょう。140万キロワットの大型炉ですからUAEも怖いので率先して新型炉の運転をする気はなく、同型の新古里3号機をまず完成させて運転性能が実証されたら動かすつもりです。今年9月までに運転させる約束になっていて実現できないと毎月、違約金を払わせられるのですが、行き詰っています。重要部品の制御ケーブルの耐火性が偽造されて保証されないと判明、代替え品が見つけられない状況です。送電線も地元の反対で出来ていません。

 UAEもサウジも韓国のズサン体質に気が付いていないのが不幸です。大型フェリー沈没事故をめぐる第464回「セウォル号救助失敗に国家の罪を認める判決」や、国民性を解き明かした『奇怪な韓国の闇、民衆は達観する「愚政府・愚役人」』、さらに第477回「安全になれぬ韓国、手抜き勝手の国民意識が原因」が能弁に語っていると思います。


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