第502回「移民受容どころか国際結婚の活力も大幅減退」

 人口動態統計の年次改訂がある秋、国際結婚の動きをグラフ化してみたら活力が大幅に減退していると判明です。国際離婚分を差し引いた実質の増分は年間7千件に落ち、移民受容どころか縮こまる日本人像が見えます。過去の傾向と異なり、実質経済成長率がプラスに転じた2012、2013年にも国際結婚が縮小し続ける異変は、結婚する若い世代で非正規雇用が半数となりお金が回らなくなった社会の構造からでしょう。もともと国際結婚は国内で難しくなった嫁探しを海外に求めて増えた経緯がありました。  国際結婚は1990年代後半からリーマン・ショックまでの経済成長持続で右肩上がりの増加を続けました。第344回「急速に縮む国際結婚の謎判明:経済成長率に依存」にあるグラフを参照下さい。2006年には44701組とピークに達しました。それが2014年には21130組と1989年の22843組を下回る水準まで落ちました。国際離婚も結婚のピークから3年遅れた2009年に19404組に達した後、結婚数の減少に伴って下がっていきます。両者の差は2006年には27599組もあったのに、近年は7000組前後です。

 グラフの1992〜2014年の期間で集計して、離婚数を結婚数で割る離婚率は42.8%でした。第339回「夫婦3組に1組は離婚時代定着。米国は2に1」で紹介した日本と米国の中間値です。結婚相手の主な国籍別に見ると、韓国・朝鮮が49.0%と高く、フィリピンも46.6%です。一方、米国は26.8%、タイも38.3%と低く、中国は42.1%と平均並みでした。米国人との結婚は日本人が妻になるケースが圧倒的に多く、米国全体の半分しか離婚がないのは興味深いと思います。

 経済成長率はリーマン・ショックから回復して、2012年に1.75%、2013年に1.61%と増加に転じ、2014年は-0.06%と微減でした。これなら国際結婚が反転増加して良いのに、減っていく一方です。第314回「非正規雇用にある男性の半分は生涯未婚か」で指摘したように、生涯未婚率が5割にもなろうかとしているのが現実です。嫁探しどころでない、かつかつな生活をしている若い層が大幅に増えましたから国際結婚に打って出るどころではありません。

 これから深刻さを増す人口減少問題で、海外からの移民、あるいは中東・アフリカなど難民の受容は進みそうにありません。せめて国際結婚でも増えたらと考えて最新統計を調べましたが、構造的な深刻さが浮かぶだけです。第497回「先進国で人口減少は日本だけに、独は難民受容」にあるように先進国で日本のような状況は特異なのです。安倍政権はこの現実を直視しませんし、マスメディアも政府追従で弱々しい声しか上げません。