地検特捜の捜査ここまで劣悪。東京も大阪も [BM時評]

 障害者向けの郵便料金優遇制度悪用に便宜を図ったとして起訴されている村木厚子元局長の裁判で、大阪地検特捜部の捜査がいかに劣悪か、笑い出したくなるほど明白になってきました。しかし、こんな面白いニュースに対してマスコミは出来るだけ踏み込まず、扱いを控えめに努めているように見えます。NHKにいたっては、ここでも地検の側に立って報道する姿勢です。東京地検特捜部の小沢政治資金疑惑事件といい、検察当局とマスメディアは「心中」するつもりなのでしょうか。これから国民から生じるリアクションの大き、深刻さを思うと愚かしさに唖然とします。

 村木元局長事件は、民主党の石井一議員が「凜の会」代表の倉沢被告を紹介したことから始まったというのが地検特捜部が描いたストーリーです。4日の公判に出廷した石井一議員はこれをありえない事実として根底から否定しました。ジャーナリストの江川紹子さんがツイッターで公判廷を「実況中継」しているのを《「この裁判は検察の倫理、検察の存在(意義)を問うている」(石井一議員)*村木元局長裁判の様子を江川紹子氏がツイート!》が記録しています。

 「今日の公判で弁護側証人として出廷した石井議員は、過去40年にわたって自分の予定と実際の行動について克明に手帳に記録している、と証言」倉沢被告と面会したとされる日は「午前7時頃に自宅を出て、1ラウンドプレーをし、風呂に入って着替えをして4時頃ゴルフ場を出たとのことです。その後は東京に戻り、赤坂の料理屋で議員や業界関係者との懇親会に直行」「捜査段階で大阪地検の前田検事の事情聴取を受けています。そのときも、2004年分の手帳を全部並べて『見ていただいて結構ですよ』と言ったのに、検事はあまり興味を示さず、パラパラを見ているくらいで、その日について詳しく聞かれることはなかった、とのこと」

 私が検察官を取材した経験からは、これが事実なら、もう勝負は「終わっています」ね。事実だったことを法廷で「証明」するために、検事だけでなく都道府県警の捜査官もどれほど細部を詰めていることか。それほど要るのかと思えるほど複数の関係者から証言を集め、補強するのが、捜査では当たり前の世界だったのです。特捜部の捜査がこの程度の思いこみで進行しているのなら、検事総長の首がいくつあっても足りないと思います。

 江川ツイッターの続きです。「検察官は石井議員の証言を崩そうと必死。一緒にゴルフに行った議員が、当日、国会の委員会に出ていたという議事録を突然出してきた。ところが石井議員、『いい所に目をつけられましたが、議事録には出席してもしなくても、メンバー全員の名前を載せるんです』」「さらに検察官、『その日はインのスタートで……』と言ったところで、弘中弁護士すかさず立ち上がり、『異議!』。それは証拠に出てないと。尋問が終わった後、弘中弁護士が再び立ち上がり、『インからスタートしたと分かっているのは、ゴルフ場に照会をしているんですよね。それを開示してください』とたんに検察官しどろもどろ」

 こうしたやり取りが法廷で取材したNHKの記者によると「石井一議員 検察側主張を否定」で「石井議員は『その日は、同僚の議員らと千葉のゴルフ場に行っており、議員会館には行っていない』と述べました。これに対し、検察官は、その日の国会の議事録を示して『同僚の議員が委員会に出席しているとの記載がある』と指摘し、石井議員は『ゴルフをいっしょにしたという自分の記憶にまちがいない』と反論しました」と変わってしまうんです。どういう記者トレーニングを受けてきたのでしょう。あるいは細部まで書いた記事をデスクが勝手に書き換えた可能性もあります。

 ブログには辛辣な声が溢れています。例えば「あえて記者クラブ存続論」は「検察とメディアが一緒になってブクブク沈没しているわけで、こうなってくると私はもう元凶と言われる記者クラブのオープン化問題なんてどうでもいいんじゃないかと思い始めた。むしろ、記者クラブを放置して晒しておいた方が問題点が浮き彫りになっていいのではないか」と主張します。

 東京地検特捜部の酷さとメディアの問題点は第199回「政治家とマスコミの愚、公認会計士が直言」「マスメディアによる『私刑』の様相すら」などで指摘したばかりです。

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