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特集F1「国会事故調(4)責任追及がし難い日本的ずさん」 (2012/07/08)

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(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)

 発足時から福島原発事故の責任追及はしないと明言した政府事故調に失望していた国民は、国政調査権を後ろ盾にした国会事故調への期待大でした。ところが、公表された報告書には誰の責任でチェルノブイリに迫る規模の大惨事が引き起こされたのか、明らかにされていません。東電と規制官庁の倒錯・複合した無責任構図が描かれているだけです。既成マスメディアに問題意識は希薄でも、国内のソーシャルメディアで不満が渦巻いていますし、海外メディアから《「国民性が事故拡大」 英各紙、国会事故調報告に苦言》(sankei.jp.msn.com)でタイムズ紙のコメントとして「過ちは日本が国全体で起こしたものではなく、個人が責任を負い、彼らの不作為が罰せられるべきものだ。集団で責任を負う文化では問題を乗り越えることはできない」が伝えられました。

 107人が亡くなったJR西日本福知山線脱線事故では強制起訴とはいえ、歴代の3社長が法廷で責任を問われました。福島原発事故の場合、これから出される政府事故調報告が責任所在を打ち出す可能性は乏しいから、検察が動こうとしても「個人責任」に到達するのは無理と考えるでしょう。

 海外が長かった黒川委員長は英語版ダイジェストの冒頭で「What must be admitted ? very painfully ? is that this was a disaster “Made in Japan.” Its fundamental causes are to be found in the ingrained conventions of Japanese culture: our reflexive obedience; our reluctance to question authority; our devotion to ‘sticking with the program’; our groupism; and our insularity. 」と、日本語版に無い表現で率直に語っています。「とても苦痛ながら、これはメイドインジャパン災禍です。従順で権威に逆らわず、前例踏襲、集団主義、島国根性といった日本文化が根源にあります」

 しかし、敏腕内科医の黒川委員長を絶望的にしている過失や不作為のオンパレードを日本文化と呼ぶのは間違っています。こんな体たらくでは普通の民間企業は生きていけません。地域独占の電力業界でも、1984年にデミング賞を受賞したころの関電を取材した経験では、役員から運転員の訓練センターまで品質管理の意識が共有されていました。導入された初期加圧水型炉は不完全との認識も共有されました。

 政府の規制など、癒着しているから小手先でかわせると高をくくった「東電特有の文化」と看るべきです。報告書535ページ「長年放置された配管計装線図の不備」を読んで福島第一原発では複雑な配管の最新経路図が存在しなかったと知り、現場のエンジニア精神の腐敗、技術経営の無責任に呆れました。これまでに調べられた7割の配管で15000カ所の図面修正が必要と認識されたのに、作業はまだ終わっていませんでした。有名になった「ベント作業」がなかなか進まなかったのも、配管図に不備があったため放出経路を考え出すのに時間を要したのです。

 福島事故の責任を問うなら、まず直接の引き金になった事象を確定し、その行為の責任者や回避するための注意義務を負っていた人物を、現場から経営陣、規制官庁まで含めて特定します。その上で連帯すべき責任者を列挙します。焦点は最初に爆発した1号機で、国会事故調は地震動による小規模の冷却材喪失(LOCA)を推定し、政府事故調中間報告は最後の安全装置「非常用復水器」が運転員未熟で使えなかった点を問題視しているように見えます。実際には相当の専門家とお金を投入し、事故再現作業をしてみないと決められません。「日本的杜撰(ずさん)」は日本文化に求められるべきではなく、最初から責任特定を期さない両事故調の枠組みにあります。

 【参照】「原因は語らず懸命努力説明ばかり東電事故報告」
   「福島事故責任は誰にあるか、判明事実から究明」
   「恐ろしいほどのプロ精神欠如:福島原発事故調報告」
   「2、3号機救えた:福島原発事故の米報告解読」
   インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

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