第688回「習近平・中国指導部は民を富ませず奪うだけ」
中国経済の破滅一直線は隠しようもなく、中国株式を握っている既得権益層を救済するために官製高値相場を演出して売り逃げさせた――国慶節をはさんだ中国株の高騰で一般の投資家は高値段階で買い参入、借金までして買ったのに直後の暴落のため手痛い大損を出していると伝えられています。18日の《中国GDP、第3四半期は4.6%増》も経済の実態と乖離した国家統計局発表であり、焦点の製造業や金融業は10倍や5倍の成長率水増し発表です。勝手な空想上の中華繁栄世界に遊んでいる習近平・指導部の舵取りでは中国が再び富むことは無いでしょう。新型コロナ禍でも日本や欧米各国などは、困った国民の生活支援や商売が立ち行かなくなった中小企業に援助の手を差し伸べました。中国ではそれが一切なく、逆にゼロコロナ政策の徹底・都市封鎖で飲食店が大量閉店になりました。全く助けはありませんでした。古代聖王「民を慈(いつく)しむ」から外れるにしても、あんまりです。
7月の第687回「中国GDP統計は現実逃避、習近平忖度で集計値無視」に続いて、国家統計局がウェブに出している前年同期の四半期GDPの数字をもとに計算した成長率と発表値を比べました。第一次、二次、三次産業別の発表値も計算値と違い過ぎて、これを信じて政策を立てれば必ず失敗するレベルです。製造業は実際の0.5%が5%と10倍、金融業は5倍の高成長を標榜しており、正気の沙汰とは思えません。(第3四半期GDP統計の詳細は、中国国家統計局ウェブでURL、2024年分と2023年分をご参照)
14億人の民全体より、1億人弱でしかない中国共産党員の利益こそが習近平・指導部の関心事です。習近平国家主席就任時にインタビューした英国のジャーナリストが「彼は共産党員のことしか考えていなかった」と驚きを伝えています。共産党員は官僚体制・膨大な国有企業の中枢に位置してワイロを取りまくりっています。日本の常識的なワイロ金額とは桁が全く違い、個人で何十、何百億円、元老クラス一族なら何千億、兆円の単位でワイロを集めるとされます。
いま財政破綻が地方政府を襲い。公務員や教員給与を大幅カットしても払えず、給与遅配が広がっています。1-7月の地方財政収支は四川省のマイナス8兆円を最高に30市省軒並み赤字でした。このため30年前まで遡って企業の違法行為を摘発して支払わせる動きが各地にあります。ワイロを渡して見逃すか、軽減して貰うのが「常識」だった中国ではみんな脛に傷だらけです。過積載や違法電動バイクなど交通違反摘発を大幅に強化して、庶民から小金を巻き上げるのにも必死です。
中国が世界の中心に立つと宣言して7年
2017年10月の党大会で、習近平国家主席は、中国が「世界の舞台の中心に立つ」べき「新時代」を迎えたと述べました。《「この新たな時代における中国的社会主義」は中国が「世界の大国になった」ことを意味すると語り、中国は人類の歴史の中で重要な役割を果たしていると述べた。習氏は、共産党政権の下での中国の発展モデルは「繁栄している」とし、ほかの発展途上国に「新たな選択肢」を提供したと語った》(BBC報道)
中国発展モデルの繁栄とは何だったのか、今になって事実が明かされました。不動産バブルによって、ほぼ無価値だった土地の使用権を地方政府が売りまくることが出来て、政府は打ち出の小づちを手にしました。マンションが資産保有の手段と化した結果、需要をはるかに上回る数のマンションが建設され、第686回「中国の虚構:売れ先無いマンション莫大に所有」という事態に至りました。
ブルームバーグなどの報道によれば建設中の未完成マンション4800万戸と6000万戸の売れ残り住宅が現在、市場にあるといいます。さらに億戸単位の投資用マンションが都市富裕層の手元にあると考えられますが、実需は年間に結婚する700万組カップルの数程度です。投資用マンションは将来売れる見込みがなくても帳簿上は価値が計上され、金融担保になっています。中国の金融システムは巨大な地雷原を抱えていると申し上げます。住宅ローンを払えなくなったなどでマンションを差し押さえても、競売しても売れないので無価値です。金融業は立ちいかなくなっており、今年になって銀行幹部が多数辞職し泥舟脱出の動きです。
「打ち出の小づち」から生まれた資金が習近平提唱の「一帯一路」プロジェクト資金源になってきました。その資金も途絶えようとしています。発展途上国に新たな繁栄モデルを提供など虚構もいい所でした。不動産バブルによって生産が増強された鉄鋼やセメントなど資材の行き場は無くなり、安値輸出に向かっています。途上国であっても鉄鋼業は国の支柱ですから、安い中国製氾濫で焼け野原にされてはたまりません。巨額補助金で築いた電気自動車産業による出火し易いEVの安値輸出などと並んで「中国拒否」を煽ることになります。
ニューヨークタイムズが10/11の記事で興味深いグラフを掲載しました。以下です。 《2022年春、上海では新型コロナウイルス対策で2か月間ロックダウンが実施されたが、その間に消費者信頼感は急落し、回復していない。政府が9月29日にコメントなしでオンライン上に発表した最新の公式信頼感指数は悲惨な内容だった。中国の消費者は、2022年11月を除き、1990年以降、8月の経済に対する信頼感が最も低かったことが示された》
消費動向の先行指標になるこの指数、最悪状態へと推移しています。ゼロコロナ政策の放棄で一瞬、立ち直りかけますが、IT産業などを規制で潰し年間1000万人を超える新規学卒者の半分しか就職できない若者絶望状況では、消費が盛り上がるはずもありません。国慶節の休暇は国内旅行に多数が出掛けましたが、ホテルに泊まる客が少なくてホテル代が値下がりし、SNSでは観光地の公衆トイレでぎっしりと雑魚寝する写真が注目される始末でした。
自分の国の中である程度は需給のバランスをとって経済成長するべきです。他国産業を自己都合の輸出暴走で焼け野原にしてよいはずはなく、他国の存在をリスペクトして共栄する「常識」が習近平・指導部には欠けています。ケ小平時代からしばらくは「自戒」の姿勢だけは保っていました。最も配慮すべき自国の民を搾取対象とするのですから、まず、中国の民から見放されつつあります。
【中国関連の記事】
第683回「急速高齢化の脅威に、中国指導部は無策傍観」
第624回「14億人中国の暗雲:男女人口大差と年金使い込み」
第602回「中国の労働人口、今後は1億、2億と減る衝撃」
14億人の民全体より、1億人弱でしかない中国共産党員の利益こそが習近平・指導部の関心事です。習近平国家主席就任時にインタビューした英国のジャーナリストが「彼は共産党員のことしか考えていなかった」と驚きを伝えています。共産党員は官僚体制・膨大な国有企業の中枢に位置してワイロを取りまくりっています。日本の常識的なワイロ金額とは桁が全く違い、個人で何十、何百億円、元老クラス一族なら何千億、兆円の単位でワイロを集めるとされます。
いま財政破綻が地方政府を襲い。公務員や教員給与を大幅カットしても払えず、給与遅配が広がっています。1-7月の地方財政収支は四川省のマイナス8兆円を最高に30市省軒並み赤字でした。このため30年前まで遡って企業の違法行為を摘発して支払わせる動きが各地にあります。ワイロを渡して見逃すか、軽減して貰うのが「常識」だった中国ではみんな脛に傷だらけです。過積載や違法電動バイクなど交通違反摘発を大幅に強化して、庶民から小金を巻き上げるのにも必死です。
中国が世界の中心に立つと宣言して7年
2017年10月の党大会で、習近平国家主席は、中国が「世界の舞台の中心に立つ」べき「新時代」を迎えたと述べました。《「この新たな時代における中国的社会主義」は中国が「世界の大国になった」ことを意味すると語り、中国は人類の歴史の中で重要な役割を果たしていると述べた。習氏は、共産党政権の下での中国の発展モデルは「繁栄している」とし、ほかの発展途上国に「新たな選択肢」を提供したと語った》(BBC報道)
中国発展モデルの繁栄とは何だったのか、今になって事実が明かされました。不動産バブルによって、ほぼ無価値だった土地の使用権を地方政府が売りまくることが出来て、政府は打ち出の小づちを手にしました。マンションが資産保有の手段と化した結果、需要をはるかに上回る数のマンションが建設され、第686回「中国の虚構:売れ先無いマンション莫大に所有」という事態に至りました。
ブルームバーグなどの報道によれば建設中の未完成マンション4800万戸と6000万戸の売れ残り住宅が現在、市場にあるといいます。さらに億戸単位の投資用マンションが都市富裕層の手元にあると考えられますが、実需は年間に結婚する700万組カップルの数程度です。投資用マンションは将来売れる見込みがなくても帳簿上は価値が計上され、金融担保になっています。中国の金融システムは巨大な地雷原を抱えていると申し上げます。住宅ローンを払えなくなったなどでマンションを差し押さえても、競売しても売れないので無価値です。金融業は立ちいかなくなっており、今年になって銀行幹部が多数辞職し泥舟脱出の動きです。
「打ち出の小づち」から生まれた資金が習近平提唱の「一帯一路」プロジェクト資金源になってきました。その資金も途絶えようとしています。発展途上国に新たな繁栄モデルを提供など虚構もいい所でした。不動産バブルによって生産が増強された鉄鋼やセメントなど資材の行き場は無くなり、安値輸出に向かっています。途上国であっても鉄鋼業は国の支柱ですから、安い中国製氾濫で焼け野原にされてはたまりません。巨額補助金で築いた電気自動車産業による出火し易いEVの安値輸出などと並んで「中国拒否」を煽ることになります。
ニューヨークタイムズが10/11の記事で興味深いグラフを掲載しました。以下です。 《2022年春、上海では新型コロナウイルス対策で2か月間ロックダウンが実施されたが、その間に消費者信頼感は急落し、回復していない。政府が9月29日にコメントなしでオンライン上に発表した最新の公式信頼感指数は悲惨な内容だった。中国の消費者は、2022年11月を除き、1990年以降、8月の経済に対する信頼感が最も低かったことが示された》
消費動向の先行指標になるこの指数、最悪状態へと推移しています。ゼロコロナ政策の放棄で一瞬、立ち直りかけますが、IT産業などを規制で潰し年間1000万人を超える新規学卒者の半分しか就職できない若者絶望状況では、消費が盛り上がるはずもありません。国慶節の休暇は国内旅行に多数が出掛けましたが、ホテルに泊まる客が少なくてホテル代が値下がりし、SNSでは観光地の公衆トイレでぎっしりと雑魚寝する写真が注目される始末でした。
自分の国の中である程度は需給のバランスをとって経済成長するべきです。他国産業を自己都合の輸出暴走で焼け野原にしてよいはずはなく、他国の存在をリスペクトして共栄する「常識」が習近平・指導部には欠けています。ケ小平時代からしばらくは「自戒」の姿勢だけは保っていました。最も配慮すべき自国の民を搾取対象とするのですから、まず、中国の民から見放されつつあります。
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