第689回「中国を覆う大不況、経済成長どころか縮小必至」
中国の生産や経済の中心である深センや上海などから人が消え、季節外れの出稼ぎ者帰省ラッシュが伝えられています。珠海市で車が暴走して市民をはね35人死亡や無錫職業技術学院での刺殺8人死亡など、11月に入って相次ぐ深刻な社会不安を引き起こす事件の背景に、経済大不況による行き詰まり感の広がりがあります。中国当局はそれでもGDP4%台の経済成長を発表し続けていますが、経済成長と表裏一体である政府の税収推移を発表順に並べると、税収はどんどん減っており、嘘が歴然です。
「2023年1-4月は前年同期比12.9%増」
→「2023年1-11月は前年同期比で7.9%増」
→「2024年上半期の中国の一般公共予算収入は前年同期比2.8%減」
→「2024年10月の中国の税収は前年同月比1.8%増で、年内では初めて増加」
――中国網日本語版(http://japanese.china.org.cn/)で「税収」をキーワードに検索すると、こう判明します。
中国本土の「百度」検索を利用して探ってみると《今年初の税収増加の背景》(中国語11/19)という国盛証券関係者による解説記事を見つけました。そこにあったグラフが以下です。 今年の税収が前年比でマイナス続きだったのに10月に初めて好転した点を誇る記事なのですが、政府発表では見つけられない税収実績のグラフを国盛証券研究所が作成しています。2023年はゼロコロナ政策解除の後で税収増がありましたが、2024年になってからはずっと前年比マイナスで推移していたのです。
やはり「百度」検索で出てきた《2024年1月から10月までの中国の税収は15兆782億で前年比4.5%減少、税外収入は同15.3%増加した。》(中国語11/18)は中国財務省の発表を以下のように伝えます。
《2024年1月から10月までの財政収入と支出を発表した。税収と税外収入を見ると、1月から10月までの国税収入は15兆782億元で、前年比4.5%(前回値5.3%減)減少した。税外収入は3兆4199億元で前年比15.3%増(前回値13.5%)となった》
《(物品の販売、役務の提供、海外からモノを輸入する際に発生する)国内増値税は5兆6619億元で、前年比5.1%減少した》
《国内消費税は1兆4055億元で、前年比2.4%増加した》
《法人税は3兆8467億元で、前年比2.9%減少した》
《個人所得税は1兆1987億元で、前年比3.9%減少した》
《輸入品に対する付加価値税と消費税は1兆5777億元で、前年同期と同じであった。関税額は2021億元で、前年比4.4%減少した》
元単位の数字を円単位の数字にするには20倍したらよいです。国内増値税、法人税、個人所得税が1月から10月まででこんなに減っているのに4%台経済成長している、とは、どのようにしても説明は無理です。もともとGDPの3割を占めていた不動産関連投資がバブル崩壊で失速し、代わりの成長エンジンが見つかっていないのですから当然の事です。
10月の第688回「習近平・中国指導部は民を富ませず奪うだけ」でこう指摘しました。
《いま財政破綻が地方政府を襲い。公務員や教員給与を大幅カットしても払えず、給与遅配が広がっています。1-7月の地方財政収支は四川省のマイナス8兆円を最高に30市省軒並み赤字でした。このため30年前まで遡って企業の違法行為を摘発して支払わせる動きが各地にあります。ワイロを渡して見逃すか、軽減して貰うのが「常識」だった中国ではみんな脛に傷だらけです。過積載や違法電動バイクなど交通違反摘発を大幅に強化して、庶民から小金を巻き上げるのにも必死です》
税外収入が増えているのは、まさにこうした仕掛けの結果です。公務員や教員給与大幅カット・未払い以外に、病院や民間企業でも給与の未払いが多数発生しており、抗議行動やストライキが連日起きています。これを暴力的に取り締まり、弾圧する警察・公安職員への給与はまだ払えているようですが、中国政府には本当にお金が無いのです。
社会の行き詰まり感や社会不安を引き起こしている要因に若者の大量失業があります。毎年1000万人を超える新規大卒者が出るのに、近年は半数は就職できない有り様です。若者の就職予備軍が2000万人から3000万人と膨張していくのは恐ろしい状況です。就職先を多数つくる民営企業を圧迫して、国営企業を優遇する「国進民退」路線の習近平・中国指導部には打つ手がありません。
【中国関連の記事】
第686回「中国の虚構:売れ先無いマンション莫大に所有」
第683回「急速高齢化の脅威に、中国指導部は無策傍観」
第674回「中国大卒就職難は中国政府の大勘違いから」
第624回「14億人中国の暗雲:男女人口大差と年金使い込み」
第602回「中国の労働人口、今後は1億、2億と減る衝撃」
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→「2023年1-11月は前年同期比で7.9%増」
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→「2024年10月の中国の税収は前年同月比1.8%増で、年内では初めて増加」
――中国網日本語版(http://japanese.china.org.cn/)で「税収」をキーワードに検索すると、こう判明します。
中国本土の「百度」検索を利用して探ってみると《今年初の税収増加の背景》(中国語11/19)という国盛証券関係者による解説記事を見つけました。そこにあったグラフが以下です。 今年の税収が前年比でマイナス続きだったのに10月に初めて好転した点を誇る記事なのですが、政府発表では見つけられない税収実績のグラフを国盛証券研究所が作成しています。2023年はゼロコロナ政策解除の後で税収増がありましたが、2024年になってからはずっと前年比マイナスで推移していたのです。
やはり「百度」検索で出てきた《2024年1月から10月までの中国の税収は15兆782億で前年比4.5%減少、税外収入は同15.3%増加した。》(中国語11/18)は中国財務省の発表を以下のように伝えます。
《2024年1月から10月までの財政収入と支出を発表した。税収と税外収入を見ると、1月から10月までの国税収入は15兆782億元で、前年比4.5%(前回値5.3%減)減少した。税外収入は3兆4199億元で前年比15.3%増(前回値13.5%)となった》
《(物品の販売、役務の提供、海外からモノを輸入する際に発生する)国内増値税は5兆6619億元で、前年比5.1%減少した》
《国内消費税は1兆4055億元で、前年比2.4%増加した》
《法人税は3兆8467億元で、前年比2.9%減少した》
《個人所得税は1兆1987億元で、前年比3.9%減少した》
《輸入品に対する付加価値税と消費税は1兆5777億元で、前年同期と同じであった。関税額は2021億元で、前年比4.4%減少した》
元単位の数字を円単位の数字にするには20倍したらよいです。国内増値税、法人税、個人所得税が1月から10月まででこんなに減っているのに4%台経済成長している、とは、どのようにしても説明は無理です。もともとGDPの3割を占めていた不動産関連投資がバブル崩壊で失速し、代わりの成長エンジンが見つかっていないのですから当然の事です。
10月の第688回「習近平・中国指導部は民を富ませず奪うだけ」でこう指摘しました。
《いま財政破綻が地方政府を襲い。公務員や教員給与を大幅カットしても払えず、給与遅配が広がっています。1-7月の地方財政収支は四川省のマイナス8兆円を最高に30市省軒並み赤字でした。このため30年前まで遡って企業の違法行為を摘発して支払わせる動きが各地にあります。ワイロを渡して見逃すか、軽減して貰うのが「常識」だった中国ではみんな脛に傷だらけです。過積載や違法電動バイクなど交通違反摘発を大幅に強化して、庶民から小金を巻き上げるのにも必死です》
税外収入が増えているのは、まさにこうした仕掛けの結果です。公務員や教員給与大幅カット・未払い以外に、病院や民間企業でも給与の未払いが多数発生しており、抗議行動やストライキが連日起きています。これを暴力的に取り締まり、弾圧する警察・公安職員への給与はまだ払えているようですが、中国政府には本当にお金が無いのです。
社会の行き詰まり感や社会不安を引き起こしている要因に若者の大量失業があります。毎年1000万人を超える新規大卒者が出るのに、近年は半数は就職できない有り様です。若者の就職予備軍が2000万人から3000万人と膨張していくのは恐ろしい状況です。就職先を多数つくる民営企業を圧迫して、国営企業を優遇する「国進民退」路線の習近平・中国指導部には打つ手がありません。
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